25歳の1945年 その1 |
懐しい人々。私の心のすベてを知ってくれてゐる人。
私の心を打ちあけて語るのをきいてくれる人。
いつも私を心に入れて愛してくれる人。
父・母・姉。
愛する三人。
大声で叫び呼びたいこの気持ち。
御恩になりっぱなした私。
人一倍、心配と迷惑をかけた私。
いつの日にか少しは三人の役に立ち得られやうか。
年若くして逝いた兄。
これから父・母の頼れる兄だったのに。
すべての生活を兄の人格と研究の事のみ考えて、
父も母も姉も兄の死に、現実の世界の一番の悲しみによくたえ、
父と母にとつては一生のあらゆる方面の建設努力が全くすべて水泡に帰した感が
神の国に帰ってしまった事を深く残念に思う。
若い素直な美しい姉にとって子供のなかった事は 兄を愛し尊敬していだけに
今は残念かもしれないけれど、私はむしろ幸福だと思ふ。
再び愛する事の出来るよき人が必らず与へられ 意義ある姉らしい努力の生活
もしも姉の生涯が一人であれば 私はノリコを必らず (姉がそれを欲するなら)
何故ならススムが生をうけて無事に産れたのも
姉の私に対する申訳のない非常な犠牲があり、