「地雷が無い世界を作るために」 by 地雷ゼロ宮崎 代表上野匡毅 |
2001年5月に友人の紹介で、当時大学生だった鬼丸昌也氏と会うことになった。彼は現在京都でNGOテラルネッサンスの理事長をし,地雷廃絶や子ども兵、小型武器削減に向けた活動をしている。彼が初めてカンボジアの地雷原に行った時の話しを聞いた。それまでは地雷とは、日本から離れた遠いことで、自分の頭の中には殆ど入っていなかった。そのとき聞いたことが私の活動の始まりとなる。
地雷は「悪魔の兵器」と言われ、被害に遭っているのが殆ど一般の人たちで、兵士ではない。そのうちの3割が子どもたちで、毎日被害者が50人ずつ出ている。被害者のうちの半数は病院にたどり着く前に亡くなっている。
地雷を一個作るには100円足らず、しかし撤去するには10万円かかる。地球上に埋まっている地雷は7000万、すべてを取除くのには700年かかる。
地雷によって多くの人が苦しめられている現状を知ってしまった。
鬼丸氏が最後に言った。マザーテレサの言葉「愛の反対は無関心」。世界の問題に関心を持たず、無関心になることで多くの人を見殺しにしている。この言葉が自分の心に突き刺さった。知らなかったこと、無関心だったことが恥ずかしかった。
この言葉をきっかけに、地雷のことを多くの人に聞いてもらおうと講演会を宮崎で企画していった。そして地雷をなくすためのボランティア団体[地雷ゼロ宮崎]が2001年11月に誕生した。
全ての問題、出来事は知ってもらうことから。講演会活動を通じて募金が集まり、また街頭募金活動を行い、少しずつ活動が広がっていった。そして2002年3月集めた募金を直接カンボジアの地雷撤去NGOや地雷被害者支援で活躍している病院、義足センターなどに届けた。
最初に訪れたカンボジアは衝撃が大きかった。地雷原に行き、その日に見つかった地雷を目の前で見たときに恐怖を感じた。もし触ってしまったら自分の手足、命を奪うものを目の前にするのはすごく違和感があり、まるで映画の中での出来事のように、リアリティーがなかった。
地雷原から車で帰る途中「地雷危険」のドクロマークの看板が建っている地雷原に家が建ててあった。その中で小さい女の子が走り回っていた。女の子が動き回るたびにひやひやした。何も出来ない自分にもどかしさを感じた。今の自分に出来るのはその女の子が地雷を踏まないように祈ることしか出来なかった。
また、毎年地雷被害者の入院している病院にも訪問をする。この場所は1番緊張と気が重くなる場所だ。病室に入り、被害者を見るときは心が痛む。つい数日前までは元気で暮らしていた人が、地雷を踏んでしまい、手や足をなくしている。
私たちは病院を訪問し地雷の現状を多くの人に知ってもらうために、インタビューをさせてもらう。「もし自分が地雷を踏んで数日後に見ず知らずの外国人にインタビューをされたら、どんな気持ちになるだろう?」そういう思いをよぎらせながら毎年話を聞く。
昨年は始めて女性の地雷被害者にインタビューをさせてもらった。彼女は19歳でまだ新婚1ヶ月だった。今から幸せな家庭を気付いていこうと夢や希望を膨らませていたときに、地雷は彼女の手足、未来を奪った。話しを聞いている傍らには幼い旦那さんが心配そうに付き添っていた。
毎年カンボジアに訪れるようになって5回。都市部は年々開発が進み経済発展が目覚しい。私たちが訪れる地雷が埋まっている地域は、長い内戦が続いたところだ。内戦が終わって村に戻ったら、そこは地雷だらけの土地になっていた。他に住むところがなく、食べることがやっとの人たちは、危険と分かっていても生きる糧を得るために地雷原に住んでいる。
カンボジアの人たちは、生きるのがやっとの貧しさ故に、地雷が埋まっている危険なところで一生懸命生きている。日本で私たちが暮らしている日常とのギャップを強く感じる。
世界の1年間の軍事費は138兆円、このお金を地球上で起きているあらゆる問題、貧困、飢餓、債務、平和、地雷撤去のために使えば全て解決でき更におつりが返ってくる。
世界の地雷を全て取除くには4兆円で十分だ。日本の国家予算は80兆円、世界中の人が地雷を本当になくそうと思えば出来ないことではないと思う。日本に生まれ豊かで平和の中で暮らしてきたからこそ出来ることをしていくことが大切だと思う。
日本は物質的には恵まれているが仕事、時間に追われて心は本当に豊かなのかと疑問を持つ。カンボジアの人たちは、物質的には恵まれてなくても心に豊かさや温かさを感じる。それは、初めて会う私たちに素敵な笑顔をむけてくれる姿、貧しくても時間に追われていない、のんびりと生活している姿であり、子ども達の素直で純真な心、笑顔だ。子ども達の笑顔に何回癒され、元気をもらったことか。
これからも同じ地球上に生きている人間として、カンボジアの人たち、子どもたちに、友人になった人たちに、少しでも役立てるよう平和の種をまきながら宮崎で活動を続けていく。
地雷ゼロ宮崎 代表 上野匡毅
地雷ゼロ宮崎HP
地雷ゼロ宮崎公式ブログ
(宮崎フォトメッセージマガジン「日向時間」
2006年summer 宮崎発信 夏号より転載)
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地雷ゼロ宮崎の現在の活動内容
①地雷についての講演会。年10回から20回ほど県内の学校を中心に回っている。
②募金活動、年3回の街頭募金活動や店舗などへの募金箱の設置。
③署名活動、地雷廃絶のための署名を集めている。
④支援物資、文具などを集めカンボジアの学校などに届けている。
⑤イベントへの参加、フリーマーケットやワークショップなどの参加
⑥年1回のカンボジアステディーツアーを開催。1年活動して集めた募金、支援物資を
支援先に届けてる。今までに9回スタディーツアーを行っている。
支援先は地雷撤去団体MAG(マグ)、カンボジアトラスト義足センター、キエンクリエン障害者職業訓練センター、孤児院、ゴミの山の小学校、地雷被害者村の小学校、貧困村の村落開発プロジェクトなど
原稿を頂ければとお願い致しました。
少し前の原稿ですが、活動を始められるきっかけや、
初めて現地へ行かれた時の様子などがわかります。
そして今も宮崎での地道な活動を継続しておられます。
これからも,活動の様子をお報せいただく予定です。
もちろんそれ以前に人道上問題でしょうけど。
このようにある問題は一つ一つ心に留めて、考えていきたいと思います。マサコ