スイートピーと朝顔 グールドと田中希代子 byマサコ |
スイトピーと朝顔はツル科の植物で共にアルカリ土壌を好む。
ツル科は球根類と違って、ある時期の取扱いが悪くても、時間的に次のチャンスで開花に繋がる。
成長や変化が目に見えるし、日頃、ツル科植物の好きな人は、働き者だと思っている。
朝顔は、よほどの場所でない限り、時間限定でしか美しさを楽しめない。
これは、田中希代子さん。
グ−ルドは24時間、愛嬌をふりまいて、香りをまき散らすスイトピー。
スイトピーは花屋で売れるけれど、朝顔は庭でしか楽しめない。
これも2人の違いみたい。
田中さんの演奏は自爆テロみたいだけれど、
グ−ルドは「手榴弾」をこちらへ投げ込む。
おっと題からはずれてしまう。
スイトピーは、束ねられて小さな贈り物からたまげるプレゼントになる。
しかし朝顔は、何千輪咲いたとしても人へのプレゼントにはなりにくい。
この2人は似ている。
この世的な欲がなく、音楽を宗教の領域に高めている。
この2人程、神や降霊を感じるピアニストはいない。
田中さんの場合、音楽の神様が嫉妬して、
「人間がこのような音楽を再び聴くことを許さない」と言ったけれど、
グ−ルドは近づいて来る死神に左手でパンチすら食らわせてピアノを弾いていた。
あるいはおちょけて「お近づきになりたくない」と断った。
田中さんの演奏は、
普通の人なら息が続かない海底の真珠を取りに行った海女のよう。
あるいはまた、スパークの短編に登場する「月の少女」の歌声のよう。
田中さんは生前グ−ルドには見向きもしなかったように思う。
グ−ルドがもし田中希代子さんの演奏(恐らく聴いたことがない)を
知っていたら何と言っただろう?
「トリビアの泉」なんて言うと承知しないぞ!