文字のかおり byマサコ |
昭和30年代は私の家のまわりは田んぼばかり。
電車通学する車窓からも緑と黄色の稲田が楽しめた。
日本から稲の香りが減る頃より、
日本人も人間の匂いがしない人が増えて来た。
昆布とおかかで汁ものを作らない人たちが増えると、
切れる人たちが多くなる。
食べ物は情緒を育てるから。
佐藤春夫の詩に親しんだせいか、
文字の羅列の現代詩には馴染めなかった。
その作品には香りがないからだと気づいた私は、
どうしてかと疑問に思っていたところ、それは
「いわゆる「漢籍」がない日本人の日本語のせいだ」
と山本夏彦氏に教えていただいた。
なるほど漢字をみつめていると
時々花みたいに見えるのはそのせいか?
山本夏彦氏は、日本にはきちんと料理ができる人たちがいなくなっていることも指摘される。
パン一切れが、工場生産の混ぜもの一杯のものなら、
なんだか人間の食べ物とは思えない気がする。
でも小麦を育て、特別の釜で焼いたパンなら料理以上。
真実の食品と詩人に出会うことはむつかしい世の中だ。