壺井栄著「十五夜の月」 byマサコ |
壺井栄さんの作品には、源泉掛け流しのような暖かい心が流れている。
その心の流れと温度が、私を育んだ祖父母、両親、兄姉と同じであったから、私は無条件に彼女の作品に惹かれていたのだと気づいたのは、60歳近く になってからである。
「十五夜の月」をしきりに読んだのは、10才前で、その後、全く読んでいない。
お話は、千代とその兄弟姉妹が、おばあさんに藁草履を手作りしてもらう。
売っている草履は形が良く、鼻緒の所が赤い布で、それを買って履きたいから、石段にこすりつけて破く。
するとおばあさんは
「子供の足が丈夫になってよく破れること」とますます草履作りに精を出す。
やがて千代たちは成長し、わざと草履を破かなくなる。
働き者のおばあさんはせっせと働き、ある日、突然亡くなる。
千代と妹は
「あんなに作ってももらった草履にひとつもお礼を言わなかった」と反省する。
物語のおしまいで、十五夜の月を見ていた千代は、
「これはおばあさんの心なのだ」と思って過ごす。
田舎に貧乏暮し。なんの派手なこと、楽なことに縁なく、悲しみも不平不満も生きることに埋没させて、循環して生命を送ってきた。
敗戦前は情報が少なく、人の暮しと自分の生活を見比べて欲を募らす人々が少なかったのかもしれない。
小林多喜二が殺された2月、尹東柱(ユン・ドンジュ)が肉体から旅立った2月、どんな月が出ていたことだろう。
治安維持法で殺害された方々は、それぞれに月になり、静かな花になって私たちを見守って下さっていることと思う。
追記
私の記憶ではこの話は偕成社版「少年少女現代日本文学全集20巻」で読んだ。
現在、自宅にこの本は見当たらず、インターネットで検索したが「十五夜の月」という題で別の文章が出て来ました。
一説によると、壺井栄さんは発表後も手を入れて題や内容を変えられる事もあったとか。
私の記憶違いかどうか、本が出てこないとわからない事になりました。
【朗読】壺井栄「十五夜の月」 朗読・あべよしみ
治安維持法とは、1925年(あっ、グールドの両親が結婚した年!)普通選挙法と抱き合わせて制定されました。
天皇制と資本主義に批判的なすべての思想と運動を「犯罪」視する野蛮な法律です。
逮捕者は数十万人。送検者は7万5681人。起訴は5162人。
警察で虐殺された人は93人。
刑務所、拘置袖の虐待・暴行・発病などで獄死した人は判明しているだけで414人を数えます。
詳しくは「婦人通信」2015年10月号で。 マサコ
は、拘置所の間違いです。 マサコ
マサコ
探していただければ幸いです。
マサコ