web版16 web版が生まれるまで by 伊東香保 |
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これは、「戦争とわたし そして日ノ本」のペーパー版と、このweb版が生まれるまでの記録です。
1,2014年3月3日、日ノ本学園高等学校同窓会は、65回生以上(昭和15年前後に出生した人より年配の方)の同窓生239名に次の手紙をだしました。
……皆様は、百田尚樹の「永遠の0(ゼロ)」をお読みになりましたでしょうか。神風特攻隊として自爆した主人公の宮部久蔵(大正8年生)の孫が、会ったことのない祖父の軌跡をたどるお話です。
優秀な空軍パイロットの宮部は、「生まれて間もない娘に会うまでは死ねない」との信念の元、戦場での行動は極めて慎重で、そのために臆病者と非難されながら、部下に、生きて家族のところに帰ることを強く勧めるのです。
主人公があまりにも美化されているために、本当にそんな言動ができるだろうかという疑問はあるものの、孫が、初めのうちは姉に頼まれてしぶしぶと、後には「祖父の人生をよみがえらせるのは、今でなければ」と、軍隊仲間を次々に訪ねては、断片的な祖父の話を聞いていくという経過には、深い共感を覚えました。
といいますのは、私(伊東香保のことです)の両親は30年あまり前に他界しており、ふたりから貴重な戦争前後の話を聞いておかなかったことが、今、心底悔やまれるからです。
私達の母校、日ノ本学園には、1893(明治26)年の開校から120年余の歴史の間に、1937(昭和12)年から1970(昭和45)年まで校長職に当たられ、キリスト教の牧師であり「信念の人」であった波岡三郎先生が、言論弾圧を受けて懲役1年の判決に服されたという誇るべき事実があります。
波岡先生と同じ時代を生きて、過去の戦争を体験なさった同窓生は、少なくなりつつあります。そこで戦争を知らない世代のために、あなたのご記憶にある戦争にまつわる事実や思い出、さらには敗戦から間もない時期のあなたや「日ノ本」の状況などを文章にして残して頂きたいのです。……
2,ペーパー版の戦争とわたし そして日ノ本の「はじめに」では、この手紙を引用して最後に
この手紙に応えて18名の先輩から集まった原稿が、お手元の本として実を結びました。あなたにお読みいただけたら、執筆者および編集委員一同の心からの喜びです。
としています。
3,同窓会の報告
昨年12月、「戦争とわたし そして日ノ本」を発行いたしました。全学年生徒、学園関係者、総会出席者に無料で配布し、残りを販売させて頂きました。大変好評で、編集者一同喜んでおります。18名の執筆者の皆様に心より感謝いたしますと共に、この本が長い伝統を持つ日ノ本学園の歴史の1ページに残りますことを切に願っています。
4,私からの報告
*同窓の先輩の戦争体験を記録しようというこの企画は、2014年1月の同窓会本部役員会で役員全員の承認を受けて始まり、2015年12月1日に「戰爭とわたし そして日ノ本」という本として完成しました。
*体験記を書いてくださった先輩18名は、1937(昭和12)年卒業の41回生から1957(昭和32)年卒業の62回生まで、発行当時の執筆者の年齢は77歳位から最高齢96歳位です。
*編集のために執筆者と手紙やメールのやりとりを繰り返し、うち10名には直接お話をうかがう機会が持てました。
*発行部数は1256冊(同窓会が注文したのは1000冊でしたが、256冊が印刷会社の好意で届けられました)。
*発行時に高等学校に在籍していた121回生~123回生(510名)、教職員(36名)、短大や幼稚園など日ノ本関係者に合計567冊、発行当日に開催された同窓会の総会への出席者(89名)、その他合計739冊(全体の59%)を無償で配布しました。
国会図書館、兵庫県立図書館および姫路市立図書館に献本もしました。
*残りの517冊(全体の41%)は1冊500円で販売したところ、注文が殺到し、2015年12月中にほぼ完売することが明らかとなりました。
*2016年2月に「残っている本は全部欲しい」と希望してくださった方には、私が自分用に購入した200冊のうち8冊しかお渡しできませんでした。
後に「増刷をするなら100冊買います」と言ってくださったこの方のように「本がほしい」と言う方はたくさんおられます。
・日ノ本学園の元理事から本部へ届いたはがき(本部から私に郵送されました):
その題名・序文、各ページに至る学園の歴史に改めて敬意を深くしました。
学校事務室にお伺いしましたところ、既に残部がなくなったとのこと。ご検討され増版くだされば小生50部は購入いたしますのでご配慮よろしくお願い申し上げます(2016年3月)。(なおこの方は後に100冊でも買います、と言われました。)
・64回生有志の方から本部への手紙(私を経由して本部に届けました):
この度同窓会から“戦争とわたしそして日ノ本”という出版物を出してくださり、とても嬉しく、又今の時に叶ったものとして誇りにさえ思えます。伊東様からお聞きすることによりますと、もう無いということなので、是非共増刷していただきたく思います。
先日クラスメートの一人が亡くなられ、6人が集まり追悼の時を持ちましたが、全員が賛同して署名して下さいましたのでお送りいたします。どうぞよろしくお願いいたします(2016年11月)。
*2016年7月、「もっと本が欲しいと言われた同窓生の息子さんに「もうありません」と答えたら、増刷のために使うようにと3万円を同窓会に寄付してくださいました。
5,web版の誕生
かねてより増刷を求めていた私に、2017年1月24日同窓会役員一同から「同窓会としては増刷しない」という決定が伝えられました。
それを受けて私は考えました。
貴重な先輩方の記録をひとりでも多くの方、特に124回生以下の日ノ本生に、読んでいただくために、何ができるかしらん??
そうだ! 私にはブログ「海峽web版」がある!
これから「本がほしい」と言う人には「同窓会本部は増刷しないと言ってるけれど、「海峽web版」でペーパー版より楽しい記事が読めますよ」ということができる!
というのが、このweb版が世に生まれることになったいきさつです。