「韓国の小さな村で」神谷丹路(かみや にじ)著 by マサコ |
作者の「韓国のシャーマニズム」の説明は、何度読んでも美しい。
「シャーマニズムというのは民間信仰だ。……キリスト教や仏教よりもはるかに長い時間、時代を越えて韓国の人々の心の根っこをとらえてきた精神的な軸だともいえる。たとえばいまの日本人には、「民族の苦しみ」というような言葉で表現されるようなものがはたしてあるのか。本来ならば、侵略戦争をおこし、多くのアジアの人々をその犠牲にしたという過去をもつ民族の苦しみ、なんていうものがあってもいいように思うのだが、総印物が国民的レベルで認識されているとは、ちょっといいがたい。……日本人と比較したとき、韓国の人々のほうが、深い民族的苦悩をはるかに自覚している。
私はシャーマニズムのなかに人々の心を救済する何かがあるように感じた」
本書は、第1部の「失われゆく伝統文化」と
どのページを開いても私には読みやすく、情緒が整いながら、
この感じは青山透子さんの「日航123便墜落の新事実」に触れた時の気持ちに似ている。
「霧の丘にいざなわれて」 義兵たちの抗日運動 163頁
なんと美しい題だろう。
案内上手、話し上手の多彩な話題と共に、
新泰仁と七宝の位置を165頁の地図で確かめる。
作者は、この本の随所に全く趣の違う文体とアプローチで、コラムを載せている。
柔らかな本文は1段で、気分転換のコラムは2段にしつらえてあり、
コラムでは多方面にわたり生き生きしたユニークな視点で文章が冴える。
写真は白黒もカラーも大きさも素晴らしい。
著者は編集にも並々ならぬ才能を示しているようだ。
読者のためにせめてコラムのタイトルだけでも写そう。
20頁 チマ・チョゴリの思い出
36頁 似て非なる仏教のかたち
76頁 言語も国境も超える農薬の響き
78頁 早春の野を飾るチンダルレ
133頁 よみがえる風水シティ「ソウル」
154頁 妄言に思う
160頁 三.一運動と天道教中央大教堂
162頁 朝鮮軍司令官・宇都宮太郎
181頁 人々の時代を語る族譜
198頁 安重根
203頁 日本にもあった韓国式アカスリのルーツ
223頁 あこがれのピンデトック
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