加山又造と黒 by マサコ |
黒という色、私には白より難しい。
恩師マリーナ・ゲリンガス女史も黒の人だった
そして加山又造氏も、私にとって黒の人である。
黒はこわくて、迫力がある。
恩地孝四郎(版画家)はドビュッシーの「金魚」を聴いて
「黒が沢山ある」と感じた。
そうして後から、ドビュッシーが「墨絵の金魚」を見て、
霊感を得た作品だとわかって嬉しかったという。
加山又造氏の場合、お姿そのものに「黒」が漂っている。
彼の書いた黄・白・紅・青からも黒のオーラが漂ふ
黒の雪、黒の牡丹などは、入れ墨の世界ではないだろうか?
「おぼろ」という弘前の桜と月を描いた作品で
「地作りに金泥4グラム包みを20近く溶き、
相当量の黒を混ぜ、噴霧器で処理した」
とある。
弘前の桜の枝の姿に雪の重みを花になさる画伯は、
人間の苦労や重荷に鋭敏でいらしたと思う。
彼は、「波の絵を描いて、音が聞こえて来るような画は良くない」
とおっしゃったとも。
音を立てる絵は好ましくないと思われたのだろうが、
加山さんはどうしてそんなことを考えたのだろう。