「韓国から9条を考えよう!」 by 筧 宗憲 |
戦争記念館でも、日本は一貫して悪役で、これらの意図するところは、どこかでみた、「力の弱い国の国民は、ひどい仕打ちを受ける。だから家族を守るためには、強い国にならなければならない。」という一貫した尚武の精神のようでした。これは韓国に限ったことではなく、歴史上は、むしろ多数派の考え方と思います。これに対し、平和的紛争解決の思想は、力には力で、という思考は結局暴力の連鎖を生み、戦争の発生を止められない、ということを自覚し、武力によらない解決を目指すものですが、上記の2施設ではそのような視点は無かったと思います。結局、今回皆さんと見た施設では、尚武の精神からの、国民の力の結集と外国、特に社会主義勢力や日本(「日帝」といった文字を久しぶりに直に見ました。)の侵攻の防止、が国民等しく自覚しなければならない課題だ、といったメッセージがあったようでした。
しかし、一方で、私が帰国直前に寄った ソウルの国立博物館では、全く視点の異なった展示がありました。
古代からの土器、金属器、仏像、陶磁器、絵画などの展示とともに、(戦争記念館の建物に負けない大きさですが、展示物の量とかは、朝鮮戦争で国内が戦場になったせいか、日本の博物館のものよりは少なく感じました)、一角には、日本人のコレクターの蒐集した価値ある美術品や遺物が展示され、その日本人の朝鮮半島の文化への理解と、寄贈の篤志をたたえる文章が何箇所かにありました。入館無料で来館者の数も、戦争記念館の何倍もいました。
そして、今回の旅行で一番考えたことはナショナリズムということ、でした。革新を自認する人のなかにも、自分は愛国心においては、他人に負けない、という人がいますが、その「国」とは何を指すのかで意味は大きく変わってきます。冷静に内外の事実を見つめるという心を放棄させ、排外とか対立の感情を刺激する上で 愛国とかナショナリズムは絶大な効果を持ちます。当然のことかもしれませんが、いつも、どこにも、大衆のそういった感情を、意図的に刺激しようとする勢力はいて、韓国や中国でも、政府を含め、そのような意図的なやりかたがあると思います。たとえば竹島の問題も、BSE問題での韓国政府や米国への韓国民の批判の目をそらす手段として格好のものと思います。冷静な思考と行動が大切であることが、自分自身の反省も含め(笑)、最も教訓となった旅であった、と、一応、まとめました。
注:兵庫県弁護士9条の会が、8月23日から25日まで韓国を訪問し、韓国の弁護士や9条の会と意見交換、西大門刑務所、安重根記念館、戦争記念館やナヌムの家、憲法裁判所等の見学を行いました。19人の兵庫県弁護士9条の会々員が参加しました。
筧氏はそのひとりで、兵庫県弁護士9条の会Newsletter No.39から転載させていただきました。
刑務所で日本人がいる、とわかったときの回りの方々の反応がもう少し具体的に知りたいわ。ノリコ
定かではありません。
しかし案内受付の日本語のできる女性は、日本人も結構来ますよと言って手馴れた対応で、「ソウル1945」というドラマで、解放後の反政府勢力が投獄・処刑されたり、その奪還のための銃撃戦のシーン、また、そのほかの映画の監獄のシーンでもよくロケに使われます、と私のドラマについての質問にも親切に答えてくれました。
後の移動のバス中のガイドさんの説明では、一人で日本人が観覧していると、韓国人来訪者から罵声を浴びせられるようなこともたまにあるとのことでしたが、この日は、そんなことはなかったようで、それとわかると、むしろ一瞬立ち止まって何でここに日本人が居るんだ、といった感じでながめる、そんな印象を受けました。
他の参加者各位は違った印象があったかもしれませんが、ともかく、子供達にとっては、ホラー映画でも見るように、日本人というより、人間そのものに対する恐怖感が身についてしまう感じがしました。筧