mari日記:辺野古新基地に関するこれだけの嘘とインチキ |




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2019年 02月 22日
沖縄県・辺野古基地建設の是非が問われる24日の県民投票が迫っている。 自公政府は、賛成と反対の2択では不十分として「どちらでもない」との 選択肢を加えて反対票をバラそうと企てているようだが、沖縄の民意は すでに県知事選でも表明されたように反対多数が当然のことであろう。 さて、ここへ来て辺野古基地のそもそもの必要性に関して、 「その前提からして嘘!」との声が上がっている。 メディアで辺野古基地が紹介される時には必ずと言っていいほど、 「普天間基地の移転先」とか「普天間基地の代替地」などと言う枕詞がついていて、 政府筋も辺野古基地建設を強行する根拠として 「普天間基地の危険性を 除去するために何としても必要」 なんぞと言い張って来たために、辺野古 基地が出来れば普天間基地は 自動的になくなるかのような印象が広まっている。 ところが、実はこれはまったく不正確な、 どちらかというとおためごかしの 嘘であることがバレて来ている。 ![]() 当該個所を文字起こしすると・・・ ・藤田幸久: (略)今後アメリカ側との具体的な協議やその内容に基づく調整が整わない このようなことがあれば、返還条件が整わず、普天間 飛行場の返還がな されないことになりますと。 つまり、これは、辺野古の新基地が建設されても、アメリカ側との調整が 整わなければ普天間基地は返還されないということで間違いございません ですね。 ・防衛大臣・稲田朋美: 6月6日の当委員会でも申し上げましたように、米側との具体的な協議、 またその内容の調整が整わない、このようなことがあれば、返還条件が 整わず、返還がなされないということになりますけれども、そういったこ とがないようにしっかりと対応をしていくということでございます。 つまり返還条件(8項目)が整わなければ、辺野古基地ができたところで普天間基 地は返還されないのだ。(今のところ満たされた条件は2項目にすぎない) いずれにしてもこんな嘘の印象操作が長らく政府主導で行われてきたのである。 ■米軍は辺野古基地を必要としていない そうは言っても日米安全保障の元、米軍の必要は重視せねばならない? ま、あたしゃ、そんなふうには思わないけどね。 何しろアメリカ追従のお国柄、「米政府に求められれば仕方ないじゃん」と 思う向きもあるかもしれないが、こと辺野古基地については、 特にアメリカ政府や 米軍が建設を要望しているものではない。 現に米政府は2度に渡って、『海兵隊の移転を検討している』ことを 日本政府に伝えている。 その2度とも断ったのが、なんと日本政府だったのだ。 オバマ前大統領などは具体的に海兵隊のグアム移転の検討を告げたが、 これも日本側に断られている。 米軍の戦略上、海兵隊の沖縄駐留が必ずしも作戦的に成功しているとはいえない 面もあり、今後も移転を告げられることもあるかもしれないが、 この様子では、 また「そんなこと言わずに、どうぞ居てください」とお願いするのが日本政府だっ たりしするのかもしれない。 ブッシュ政権でパウエル米国務長官の首席補佐官を務めたローレンス・ウィルカー ソン元陸軍大佐は、琉球新報のインタビューに こう答えている。 日本政府が主張する在沖海兵隊の「抑止力」について 「もろ刃の剣だ。 抑止力の一方で、米軍の駐留は中国の軍事費を拡大させ、 より強力な 敵にさせる」 と、軍事的緊張を高める要因になると指摘した。 仮に朝鮮半島で有事が起きた際でも在沖海兵隊の派遣は 「戦闘が終わ ってからしか現地に到着しないだろう。 60万人の韓国軍にとって微少な追加でしかなく、戦略的理由はない」 と述べた。 ■辺野古基地の滑走路は短かすぎて使えない 辺野古基地に予定されている滑走路の長さは1800mである。 普天間の2800mに比べて1000mも短かい。 なぜ長い滑走路が作れないかと言えば、 埋め立て予定地の一角が 軟弱地盤のために建設に適さないからだ。 この短かすぎる滑走路は、作ったところで使えない、用に足りない施設となる。 元米海兵隊政務外交部次長・ロバート・D・エルドリッヂ氏はこの件について こう述べている。 「海兵隊も辺野古移設を望んでいるわけではありません。 移設後の基地は、普天間飛場よりも滑走路が短く、有事に動く主力の軍用機が 離着陸できない。普天間のように高台にもないから津波にも弱い。 住宅地にも隣り合うため、騒音被害も生まれるでしょう」 結局作っても使えないシロモノを、それでも作るという不思議。。。 ![]() ↑ 琉球新報より ■巨額の費用と長い工期、にもかかわらず完成しない可能性も 辺野古基地建設に政府は2405億円の経費と5年間の工期を予定している。 ところが沖縄県の試算では、埋め立て工事に5年、軟弱地盤の改良工事に5年、 埋め立て後の施設整備に3年、計13年がかかるとしている。 経費も2兆5500億円と巨額を予想している。 なぜこんなに見積もりに差が出るのだろうか。 これは政府が2016年から指摘されてきた現場の軟弱地盤(マヨネーズ状態と言われている) の存在を断固として認めなかったからだ。 とは言えいつまでも隠しおおせる訳もなく、安倍首相は1月30日の国会答弁で やっとこの事実を認めた。 ところが、この時に軟弱地盤工事も含めた全工費及び 工期について質問されると、 安倍首相は 「確たることを申し上げることは困難」 と言う始末。 ![]() ↑ 沖縄タイムス 言うまでもなくすべては国民の税金で賄われるのだが、 ここまでの巨大事業 の見積もりさえも出せずに、それでいて、 どんどん事は進めるとは、なんたる 無茶苦茶だろうか。 ちなみに、軟弱地盤の改良には最大90mの杭を6万〜7万本打ち込む必要が あるとされているが、このような工事は前例がなく、果たして実現 可能かどうか、 と危ぶまれている。 ■世界でも有数の自然環境を大破壊する愚 県民投票の結果も待たずに政府は勝手に埋め立て作業を強行しているが、 辺野古・大浦湾に生息する海洋生物は5806種と言われ、 そのうちの 262種が絶滅危惧種だ。 本来は希少生物の絶滅を防ぎ、今後も類まれなこの豊かな海を守っていくことに こそ労力も税金も使うべきだろう。 ところがよりによって、そんな貴重な海域を破壊しつくし、生物たちを殺しまくり、 2度と元には戻らない状態にしようとしているのが辺野古基地建設埋め立て工事だ。 ![]() こんなにも無意味な建設工事の本質は何だろう。 思うに結局は建設のための建設、工事のための工事なのだ。 米軍のためでも、日本のためでも、沖縄のためでもない。 ゼネコン利権とくっついた政治家とその お仲間たちだけが潤うために、 必要もない、使うに使えない、役に立たないものを作り、 税金を浪費し、人々の心を踏みつけにし、かけがえのない自然を破壊する。 自分たちの利益のためには大切なものが犠牲になろうとも構わない。 なんという あさましい生き方だろうか。 地球環境はすべての地球の生き物のためにあり、 私たちにはその恵みを次の世代に繋げていく義務がある。 一時の一部の人間のためのものではない。 取り返しのつかないことにならないように、 沖縄の皆さんが反対票を投じてくださることを信じて、お祈りしています。 【関連情報】2019年2月21日 22:17 ●「辺野古移設中止を」 海外識者29人が声明 琉球新報 2014年1月8日 10:11 ●ノーム・チョムスキー氏「恥ずべき行為」 土砂投入に海外識者ら日米批判 沖縄タイムス 2018年12月25日 08:09 ●軟弱地盤伏せ土砂投入 東京新聞 2019年2月21日 朝刊 ********************************* #
by grpspica
| 2019-02-22 11:43
| 命・平和・人権
2019年 02月 22日
![]() 講談社文庫2004年5月15日第一版発行 2018年12月10日読了 本書「中大兄皇子伝」の作者黒岩重吾は、平成15年3月7日、肝不全のため、兵庫県西宮市の病院で死去した。享年79。 一周忌にひらかれたしのぶ集いで、作家の阿部牧郎が「いくら酒を飲んでも、別れる際には、これから小説を書くという殺気あふれる顔になっていました。日本刀の代わりにペンを持ったサムライでした」と述べた言葉そのままに、亡くなる前日も、電話に出るだけの力がなく、担当編集者の質問には妻秀子さんを介して答える状態にありながら、気力を振り絞って月末に刊行される「役小角仙道剣」のゲラを見るという、小説の鬼としての生き方を全うした仕事ぶりであった、という。 中 略 こうも思うーー これが死を数年後にひかえた作家の書く文章であろうか、と。そして恐らくは、当の黒岩重吾も、この “身を灼熱の溶岩と化したあの一瞬 “ を求めて最後まで筆をとり続けたのではないか、と。 が、作者が描いたのは、史料への読み込みの深さや主人公との自己一体化ばかりではなかった。作中には大化の改新における公地・公民が、しばしばこう言い換えられているではないかーー既得権の放棄と。作者は中大兄皇子が私有財産を放棄する箇所で「その衝撃は既得権に胡座をかいている者や改革を甘く見て豚のように財を貪っている者ほど強く響いたに違いない」と記すことによってバブル崩壊後の出口の見えない現状。平成日本の道標なき改革に激しい活を入れているのである。この作品の連載時(平成12年)の国債・地方債を併わせた日本という国家の借金の総額約640兆円。然るにまったく危機感のない現状に作者は、驚きかつ憤りにも似た感情を抱いたのではないのか。 一人の革命者の激情と孤独を描いた本書は、古代史小説の第一人者によってすべての日本人に向かって放たれた、正しく頂門の一針だったのである。 p364・p369-370 解説 縄田一男 中大兄皇子の独白形式を取っているので皇子が傍にいて時には、 息までかかってくる勢い。表紙絵の稲妻のショートのように読めた。 黒岩重吾の歴史小説は同じ人物を色々な角度から描いてあり、 焦点の合わせ方を違えたり、オヤッと思う違った感じを表出させるので 飽きることがない。 妹との近親相姦。弟への嫉妬。 中大兄皇子は権力と地位のためなら、身内、血筋も厭わず誰でも殺した。 蘇我入鹿 645年没。 古人大江皇子(ふるひとのおおえのみこ)645年没。 石川麻呂 649年没。 孝徳天皇 654年没。 有間皇子 658年没。 いつものように物語の最後は素晴らしい。 死の床の天智天皇の追憶も大舞台を見るよう。 文字だけからとは思えない迫力で歴史の大波が押し寄せてくる。 登場人物と盛り沢山の出来事に、ぜひ手に取っていただきたい。 参考図書 ・千田稔著「古代飛鳥を歩く」中公新書 カラー写真が多く、史跡を身近に感じる事ができた本です。 **************** #
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| 2019-02-22 10:56
| 本の感想など
2019年 02月 21日
マサコ記 元記事はとても読みにくいと思うので、一部抜粋してここに記します。 NATOの悪さが膨大なのに驚きました。 日本ではほとんど知られていないのではないでしょうか? 少しずつ知った情報でいろいろなことに「???」が一杯でしたが、 この記事とYoutubeではっきりわかりました。 みんな自作自演の悪事を左派の仕業に見せかける。 今も昔も変わらないやり方ですね。 ============ 手短にいえば、グラディオ作戦とは、米の主にCIAが自分で無差別テロを起こすなどして死傷者多数のカタストロフィっくな事件を作って、左派のせいにしてきた一連の作戦。主に欧州各国で行われ、90年代初頭にイタリアの政治家がゲロッたところからばれた。 日本語版wikiはイタリアのほんの一例しか出てませんが、englishのページにはその何十倍もの情報が入ってる。 グラディオ作戦 Opration Gladioをyoutubeで検索したら、なんと、何本もあった。一つずつ見よう。 Opration Gladio ========= マサコ ヨーロッパ全土の事件では、これが一番見やすかった。 日本語字幕もないのが残念だが、映像からだけでも実像がわかる。 (英語なのと、映像がクリアでの分辛い面もあるけれど) NATO's Secret Armies (2009) ======== TAKUMIさんのコメント こうやって並べてみれば、結局まぁこの一言につきる。 戦後のアングロ・シオニストの覇権というのは、はっきり言って基地外による基地外のための支配構造。 トランプが、make America great againとか言ってるけど、いつグレートだったことがあるんだよと私は言いたいと前にも書いたけど再度そう思う。 make America finally decent(ついにちゃんとした人たちになる)とかいうテーマこそ彼らが追及すべきテーマでしょう。 ============== #
by grpspica
| 2019-02-21 17:12
| 命・平和・人権
2019年 02月 21日
物語は大河の流れの如く続く。 大阪の街が舞台で朝鮮戦争が日本にもたらす好景気。 正明は、ヒロポン工場で働きながら饂飩屋のオヤジに犯されそうになり、 家を飛び出した悦子の行方を探し続ける。 そんなある日、奈良の山奥の木こりの息子・吉岡との再会が物語に花を添える。 正明はヒロポン工場の経営者・崎平加太平と饂飩屋の親父が 繋がってるとようやく気づく。 大好きな台湾バナナの記述があった。 p26 御堂筋を越えると宗右衛門町(そうえもんちょう)である。 キャバレーやバーは勿論、レストランや商店の中には、まだ営業している店があった。 果物屋が明りを耿々(こうこう)とつけ、蜜柑(みかん)、林檎(りんご)、バナナなどを照らしている。 細くて短いバナナは台湾バナナだった。本当に台湾から輸入されているのかどうか正明は知らない。台湾バナナは菓子のように甘かった。 吉岡は正明に、一寸待ってくれ、といい蜜柑を買った。 そして紙袋の中から一つ取り出すと、それ、といって正明に放った。 吉岡のアパートに泊まる事になった正明。 引用 p120 風が窓ガラスを叩いた。長い貨物電車が、直ぐ隣の高架を走って行く。 軍需物資を積んだ貨物電車だった。 朝鮮戦争は、中国軍の参戦で泥沼の状態に入っていた。 北朝鮮は日本に較べて寒い。アメリカ軍を主力とする国連軍、韓国軍の為の防寒服の注文で、繊維業界は活況を呈していた。 いや繊維業界だけではない。 鉄鋼業、造船業を始め建築業、化学業界なども特需の影響で景気が良かった。 壊滅(かいめつ)的な打撃を受けた日本の産業は、朝鮮戦争により、立ち直るきっかけを得たのだった。 引用 p121 正明はクリスマスの日も休まないで働いた。崎平加太平に対する正明の疑惑は深くなっていた。これ迄(まで)の経過を考えても、悦子の養父と崎平加太平は、何等かの繋がりがあった。それなのに、崎平加太平は、そ知らぬ顔をしているのだ。 だが、正明は、自分の疑惑を口にするような単純な人間ではなかった。 浮浪児として育った正明は、人間に対する不信感を、自然に身につけていた。 その上、正明は、ウィルソン・大瀬に利用され、スパイの連絡係をやらされたのだ。 そういう過去の体験が、正明の人間観を、複雑なものにしていた。 その癖、正義感的な情熱も持っている。 正義感的な情熱は、正明が生まれながらに持っているものだろう。 もし正明が、天涯孤独の浮浪児にならなかったなら、多分正明は、気性は激しいが、明るい少年になっていただろう。 その点、崎平加太平は、正明が浮浪児以後に身につけた人間不信の眼や、複雑な人間観を甘く見ていた。 今では、金で正明を縛ることは出来ない、と気付いているが、まだまだ、正明を少年と思っていた。 だからこそ正明は、猜疑心(さいぎしん)の強い崎平加太平の眼を誤魔化すことが出来たのである。 ****************************** #
by grpspica
| 2019-02-21 00:00
| 本の感想など
2019年 02月 20日
集英社文庫・昭和61年8月25日第1版 読了・2019年2月12日 「はだしのゲン」の小説版とも言うべき「さらば星座」。 全編の約3/5くらいまで読了した。(2月10日記す) 聡明で智恵のある作者に、 ある時は幼時の手を引くように、 ある時は小学生のお兄さんのように ある時は中高生と対等に語る「黒岩重吾という不世出の作家」に導かれて、 私の全く知らない敗戦直前から昭和25年6月・朝鮮戦争勃発時の 日本の関西の様子を主人公・春日正明の気持と共に知ることができた。 読書中は悲惨ながらも著者の細やかな心遣いに心を慰めながら、 幾度岩に沁み入るような涙をこぼしたことか。 戦争を願う人々・戦争を計画し、戦争景気に踊り狂う人間がいることは、 昔も今も変わらない。 現在も占領され、洗脳されている日本は、米国からの武器買いが止まらず、 もうすでに国家として負け戦を進めているようなものである。 文庫本「波濤の巻 1」では、ヒロポン工場で働く正明。朝鮮戦争の始まり。 饂飩屋で養女として、こき使われる悦子(戦災孤児)と正明の交流が描かれる。 日本軍部とヒロポンの関わり。その製造法も詳しく説明される。 全国の図書館や学校に政府が「さらば星座」を入れないのも 黒岩重吾が軍部のしたことを明らかにしているからだろうと思った。 *************************** #
by grpspica
| 2019-02-20 00:00
| 本の感想など
2019年 02月 19日
父方家族が祖父亡き後、二水から台北へ引っ越して住んだ2軒の家。 昨年見つけた水道町の家に引っ越す前です。 父と叔父はすでに中学校のために台北に出て、多分寮に入っていました。 右下が昨年の「台北昭和町会」のオープニング会場となった青田茶店。 昭和市場の前の四角い部分に住む。 (水色の四角部分は間違い) 黄色四角部分(4棟の家が並んでる)に住んでました。 10ヶ月後、左下の肌色四角の東端の家に引っ越しました。 現在の地図と重ねてみると、(台湾の100年歴史地図ではこういう事ができる!) 市場の前、大安字12甲416番地は建て替えられてビルになり、 次に引っ越した錦町5条126番地は師範大学の敷地に取り込まれてます。 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ******************************** #
by grpspica
| 2019-02-19 20:56
| 旅・台湾
2019年 02月 19日
大概、雛人形を飾られていたが、我が家にはなかった。 だから自宅でのひな祭りの覚えは全くない。 ただ通っていた幼稚園では毎年、園児が雛壇に上がり、 ひな祭りを楽しんだ。 子供の頃を綴った中から、思い出深いので、もう一度ここにまとめよう。 毎年3月、その幼稚園では園児達でヒナ段を作ることになっていた。 私は最初は5人囃子。 翌年は3人官女に選ばれたけど、実はおヒナ様になりたかった 最後の年にコダンヨーコさんがおヒナ様に選ばれた時はとても残念に思った。 ↓ 三人官女 1959年3月 ある時ひどい怪我をした。 それは保育時間が終わった後のことだった。 私は男の子と二人で園の遊び場で遊んでいた。 そこへれい子ちゃんが加わった。 れい子ちゃんは鉄棒の雲梯が得意なのか、 すごい勢いで手長ザルのように運動して見せていた。 感心して見ているとある瞬間、手が離れ、 ワッと言いながら地面に顔をぶつけて落ちた。 落ちた場所に鋭い石でもあったのか、顔面から血がしたたり落ちて止らない。 すさまじく血が流れた。れい子ちゃんは泣き叫んでいる。 私は腰を抜かしていた。子供が大慌てで先生を呼びに言った。 かけつけた園長先生はれい子ちゃんを見ると顔が真っ青になった。 私は大怪我になったと思った。 その後、れい子ちゃんは顔とおでこを幾針も縫う大怪我のために 園を長い間お休みした。 久振りに登園した時は、包帯の白さが痛々しかった。 次にそこはバンソーコーのガーゼになっていた。 私はれい子ちゃんに「もう良くなったの?」と尋ねたが、 れい子ちゃんは返事をしなかった。 「あの場に居合わせたのに まるで他人事でしかない私に怒っているのだなぁ」 と気になったけれど、もうそれ以上話さなかった。 れい子ちゃん、今頃どうしているかな? その後、進学する小学校について、先生方から 「マサコさんは繊細過ぎて、ひ弱。 とても公立の小学校に通えるお子さんではありません。 この上の私立のI学園に入学なさっては如何がですか?」 とのお話があり、そのアドヴァイスを受けて Iカトリックの学園に入学を決め、園とはお別れした。 女雛になったコダンヨーコさんとは小学校も一緒だった。 この幼稚園の前に通った若葉園の園長先生とは今でもお付き合いがあるが、 「繊細で、春の陽ざしの中にいつまでも置いておいてあげたいような子供だった」 と話して下さった。 あれから40年。アメリカでは 「人生に必要なことは全て幼稚園で習う」 という題名の本がベストセラーになった。 「幼稚園にて」を書き終えてその本の題名が全く本当のことであると痛感している。 ************************** 元記事 ・子供の頃(5)聖マリアの園幼稚園その3 #
by grpspica
| 2019-02-19 20:40
| グループスピカ
2019年 02月 19日
読了・2019年2月9日 p8 第一部 「濁流の巻」 あらすじ 昭和20年8月初旬、国民学校5年の春日正明は、家族と離れ、奈良の山村に疎開していた。 空腹と寂寥の日々を送りながら、母や弟と再会できる日をたったひとつの楽しみにしていた。父は昭和15年に南方で戦死していたが、「人前で泣くな、人前で弱音を吐くな」と口うるさく言われた言葉が、どんなに辛く悲しいことがあっても、正明の胸中に甦り、耐える心の支えになっていた。 そんなある日、疎開先の津川家に宛てた母の手紙を見つけた。大阪空襲で受けた傷が悪化、入院したため、正明の養育費が遅れている弁明と哀願の手紙だった。「 正明には内緒に....」 の文字を見た正明は、手紙を握ったまま大阪行きの電車に乗るため、駅に向かって走り出していた。しかし、無賃乗車を見破られて、津川家へ連れ戻された。 そして敗戦......。 一刻も早く母に会うため、疎開先から正明がたどりついた大阪は辺り一面、焼野ヶ原と化していた。やっとの思いで母の入院先を訪れたものの、母はすでに亡かった。菜葉(なっぱ)色の袋の中におさめられた遺骨を手にした時、骨と骨とが触れて、微(かす)かな音を立てたような気がした。やっと正明に会えた母の喜びの声だったのか、それともこの世では会うことなく亡くなった母の悲しみの呻(うめ)きだったのか.......。その遺骨の入った袋も盗まれた。それほど敗戦直後の大阪の街は荒廃しきっていた。 母は病死。たったひとりの弟も行方不明、寝る所もなく天涯孤独の浮浪児となった正明は、飢と暴力に立ち向かいながら、生きることに必死の毎日だった。蒸しパンを盗み、畑の南京を盗み、貪り食った。食物にありつけない時は、水を腹いっぱい飲んで空腹を満たした。夜は墓場で、ガード下で、地下道で眠った。何度も浮浪児狩りに遭い、その度に脱走した。収容施設に入れば、食物に不自由することはなかったが、職員になぐられ、こきつかわれることは、正明にとって屈辱そのものであった。 「俺達をこんな目に遭わせたのは、大人やないか、奴等が勝手に戦争しやがって、その上、まだ俺たちを苛めやがる」 「大人の盗人と、俺達は全然違うんや、大人はな、働ける、仕事がなかったら、闇、やったらええ、だがなあ、俺達には住む家も仕事もあれへん」 正明は悲痛な声で叫び、怒る。 大阪、神戸と点々とするうちに、三の宮近辺の進駐軍兵舎に出入りするようになった正明は、キャンプ内のピストル横流し事件に巻き込まれ、やがて日系のウィルソン・大瀬と知り合う。ハウスボーイとして彼の家に住みこむことになった正明は、小学校6年に編入され、学校にも通うことになった。廃墟の焼野ヶ原に放り出されてから2年半近い歳月が流れていた。すでに英会話は中学以上の力があり、新聞を読んで国語の勉強をした。 贅沢で食うには困らない毎日......。でも、なぜか正明の心の飢えは満たされない。やがてウイルソン・大瀬の裏切りを知り、彼の家を出ることになる。自由を求めて生きる獣の本能が、再び蘇ったのだ。 さすが黒岩重吾。 かゆいところに手が届く。 誰もが知りたいと思ってることをこれだけ 適切な文章で読者に与える。 今まで作者が「敗戦」を「終戦」というのが少し気になっていた。 この文章では敗戦の言葉が2度、使われている。 なぜ「敗戦」という言葉を使ったのか。。 どうして今まで「敗戦」という言葉は使わなかったのか。。 p247 「時代の性格 1」 ヒロポンの害悪について、マスコミが再々記事にするようになったのは昭和24年頃からだが、薬局の中には、まだまだ客に売っている店が多かった。 そして警視庁が本格的にヒロポン退治に乗り出したのは昭和24年の末である。 当時の新聞によると、警視庁の防犯部の談として、次のようなことが記載されている。 ..... いぜん(編集者註・依然)はびこるヒロポン害毒について昨年警告を発したところ、却(かえ)って反響は関西にあがり、波が今、東京に押し返して来たかたちだ。実数は薬屋の届け出があいまいなためつかめないが、本年1月から10月末迄の東京都内取扱薬店1,181軒の売上月平均35箱(1箱1CC 10缶入350本)錠剤62錠となっている。しかしこれは九牛の一毛で80%までヤミ買とみてよい。年齢は大体10代が28%、20代が64%となっている。(中略)一箱が公定で81円50銭だが大てい120円から180円、バラ売りになると一本202円もして、3、4箱も打つと犯罪行為に及ぶことになる。一般にばくち打、浮浪者、夜の女、チャリンコ、こそどろ、芸人、ダンサー、文士に多いが学生の消費は試験期に睡魔を克服するため用いて頭脳が明せきになったような錯覚から深入りをする(後略) ..... 引 用 p249 (主人公)正明はヒロポン工場に勤める決心をしたが、15歳の正明には、まだ覚醒剤による害毒の恐ろしさは全く分かっていなかった。 現実に医者の処方箋があれば買える薬だから、大人達も、覚醒剤の害毒が、どんなに恐ろしいか認識していなかった。 身体に悪いぐらいは新聞を読んでいる者なら理解出来るが、覚醒剤の幻覚症状が社会に対して如何(いか)に危険であるかを、真に認識していたのは、ごく一部の大人達なのだ。 だから正明がヒロポン工場に勤める決心をしたからといって、正明をそんなに責めることは出来ないだろう。 ことにヒロポンを始め、様々な薬品名の覚醒剤は、戦時中、立川の航空技術研究所・深川の糧秣(りょうまつ)学校が、軍用の食料として研究したものの一つであったのだ。 いってみれば軍部が製造したものである。 そしてこの覚醒剤は、航空元気酒、航空チョコレート、などのなかに混入され、航空乗員の士気を旺盛(おうせい)にするため彼等に与えられていた。 だが日本の敗戦が濃厚になり、あの生還不可能な特攻隊が狂気じみた軍部によって生み出されると同時に、注射薬に変わったのだ。 或(ある)意味で、特攻隊員は覚醒剤によって、死の恐怖から救われることが出来た、ともいえよう。 まさに軍首脳部の狡猾(こうかつ)な計画の許(もと)に製造された薬品なのである。 軍首脳部の犯罪行為ともいえよう。 そして戦争末期には、軍需工場で働く人々も、徹夜の作業に耐えるために、この覚醒剤を注射するようになった。 まさに戦争の落とし子、といって良い麻薬である。 そういう意味で、終戦後の荒廃の中で、覚醒剤が或意味で必死に生きようとしてる人々、また虚無的になったり、まともな職を失った人々の間で蔓延して行ったとしても不思議ではない。 だから当時の人々の覚醒剤に対する感覚は、今の時代とは異質であり、現代感覚で批判するのは酷である。 現代では悪質な麻薬と同じであるし、阿片(アヘン)を主成分とする麻薬と同一で、 密造、密売は重大犯罪として処罰すべきであり、絶対容認出来ないのは勿論(もちろん)である。 時代の流れによって、悪というものに対する通念が変わるのは当然であろう。戦前に於(おい)て、ポルノは反道徳の最先鋒(さいせんぽう)であったが、現代では最早、そうはいえないだろう。 そういう意味で、人生や社会に対して、牙(きば)を剥(む)かざるを得ない15歳の正明を、あの時代の中で、一方的に非難することはできないのである。 朝鮮戦争が始まったのは、昭和25年6月25日である。 その日は丁度(ちょうど)、 正明の給料日であった。 ********************************** #
by grpspica
| 2019-02-19 00:00
| 本の感想など
2019年 02月 18日
集英社文庫・1984年5月25日第1版 1993年6月30日第6版 読了・2019年1月21日 あらすじ 物語は「濁流の巻 中」の「恐喝者 2」から舞台を神戸に移した。 「奇妙なドライブ 1」では 引用 p291 昭和22年の6月から秋にかけてを、正明は三の宮で過ごした。 とある。 物語は GI と MP に関わる正明の世界が展開していく。 「さらば星座 第一部濁流の巻 下」 GIのチャーリーは米軍物資を横流しするのに主人公・正明を利用する。 運搬の途中で MP に追いかけられ逃走するチャーリーは、子供を跳ね飛ばす。 正明と戦災孤児の今出は負傷し、チャーリーは死ぬ。 正明はウィルソン・大瀬に出会う。 正明はウィルソンの助けにより小学校に行くことになる。 大阪のキャンプに移動することになったウィルソンは、 正明を住吉の小学校に編入させる事を決めた。 その書類を受け取るために正明が疎開していた奈良の小学校へ二人は向かう。 引用 p130 目の前に二上山(ふたがみやま・にじょうさんともいう)が迫っていた。 奈良に疎開している時、正明は何度二上山を瞼に浮かべただろうか。 二上山は奈良と大阪を遮っている山なのだ。北の方から生駒山、信貴山と連なり、南の二上山との間を大和川が流れている。 つまり、大阪と奈良の間は、これ等の山々によって区切られているのだ。 そして大和川は、千年以上の昔から、大阪と奈良をつなぐ重要な水路であった。 正明は知らないが、日本がまだ倭国と呼ばれていた6世紀、7世紀頃、朝鮮の使者達は、河内と呼ばれていた大阪から船で、大和川を遡(さかのぼ)り、大和に入ったのである。 車は間もなく、信貴山の南と高安山と二上山の間に入った。 その辺りは国分であった。 そして、その近くに戦災孤児達を収容しているN学園があった。 正明はN学園のことは知らないが、高槻の収容所に居た頃、二上山の近くにもう一つ、同じような収容所がある、と耳にしたことがあった。 車がN学園の近くを通った時、正明は大和川の南側の高台で、少年達が働いているような気がした。 高槻の収容所では、大人が持つ大きなシャベルで土を掘り、鉈(なた)で樹を切る。空腹の余り草の根を齧(かじ)りながら働かされた。 今も高槻の収容所や、N学園では、戦災孤児達が、まるで奴隷のように働かされているのだろうか。食事はあの当時より少し増しになっただろうか。 p132の「卑劣な教師」から「嘘と真実」「心の勇気」までを読みながら、 何度、日本の学校で自殺に追い込まれて殺されていった子供達に 聞かせてあげたいと思ったことか。 例えば、学校で先生が、あるいは自宅で親が、p143〜165を読み聞かせるとか、 小学校6年生から中学・高等学校の読書会で読み合うことが出来たなら、 日本の学校はそれだけでも素晴らしくなったかもしれない。 引用p166 春の家1 帝塚山は阿倍野からあまり遠くない。 正明は阿倍野で浮浪児をしていた頃、姫松、帝塚山界隈まで来て、物を盗んだものだ。この辺りは市街地だか高級住宅街である。 姫松には万代池という大きな池があり、真中に蛇を祀っている島があった。 正明達は蛇のことをみいさんと、呼んでいた。思い掛けず正明は、姫松近辺の閑静な住宅街に住むことになったのである。 ウィルソン・大瀬の家は、万代池の近くにあった。敷地120坪で、和洋折衷の建坪50坪ほどのかなり大きな家であった。 勿論日本人が住んでいた家だが、それを接収し、ウィルソン・大瀬が住むことになっていたのである。 ・著者付記 p348 長い間、戦災孤児を主人公にした小説を書きたい、と思っていた。だがこればかりは、実際に、戦災孤児であった人に話を聴かなければ、浮浪児と呼ばれた哀れな少年達の実体が把握できない。 執筆にあたり昭和50年に、大阪市在住で、印刷会社を経営しておられる北垣庄助氏が、戦災孤児であったのを知り、早速取材を申し入れ、快諾を得ることが出来た。 氏に心からお礼を申し上げます。 唯、小説の登場人物たちは、飽くまで、作者の創作であり、氏とは関係ありません。 *********************************** #
by grpspica
| 2019-02-18 00:00
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2019年 02月 17日
タグ:日ノ本学園・戦争とわたし ←クリックして記事一覧をご覧ください。 ![]() 吉田博画伯がもう10年ほど長生きしておられたら、きっと有名となり、戦後の画壇の寵児になられたでしょう。その画伯が戦争中に、IHI相生造船所(当時の播磨造船所)に来所していた事と、同時期に、学徒動員で出向していた日ノ本女学校生徒とが関わり合い、時代を超えて画伯の作品が発見されたことで、本当に不思議な縁に発展拡大しましたね。 そして絵が好きな伊東さんが、日ノ本の同窓生のまとめ役となって、戦中派時代の同窓生に投稿を呼びかけ、ひとつの輪を醸成するという、その着眼点がいい。冊子に編集する意図と目標が定かで、冊子の校正もハイレベル、内容では、大変みのりの多い編集と出来栄え、プロ級冊子のレベルと感服しました。 今回、女学生の方々は、その時の状況が、瞼に浮き出る程リアルに表現しておられて感動しました。お一人おひとりが、体験をしっかりした文章でまとめておられて、元女学生としての品格・教養の高さを感じます。
香保のコメント
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by grpspica
| 2019-02-17 10:34
| 命・平和・人権
2019年 02月 17日
完結編までに14年を費やす。 集英社文庫・昭和59年3月25日第1版 読了・2019年1月17日 濁流の巻 第一部上 「さらば星座」の主人公春日昌昭の物語は親類の家での疎開生活から始まる。 「上」には「初めての決闘」から「昔の挨拶」まで30。 「中」には「縄張」から「掴んだ金」まで34の題が付けられている。 黒岩重吾の小説を読むまで私は、男子の喧嘩がここまで熾烈だとは知らなかった。 戦時下でなくとも命がけで戦う場面が多い。 敗戦の年8月20日に大阪に帰る正明と敵だった地元の子・吉岡があっという間に和解し、友になろうとする場面が印象的。 引 用 「焼け跡の街」p99 津川家に2年近く世話になったが、お峰に対する感謝の念は起こらなかった。 どんなことがあっても、もう二度と戻らない、と正明は心に誓って津川家を出た。 それにしても、あの喧嘩以来、吉岡は毎日のように正明の見舞にやってきた。 お峰は吉岡を家上げず、帰る前日になって、やっと正明に会わせたのだ。 バスはガソリンがないので、木炭で走る。大きな図体なので、スピードは時速30粁 ぐらいしか出ない。 「春日、俺も大阪に行くぞ、その時は会おう」 吉岡の顔には、まだ正明がつけた引掻き傷が残っていた。正明にも傷跡が残っている。吉岡に擲(なぐ)られた歯の一本は欠け、もう一本は根元がゆるみ、今にも抜けそうになっている。 バスに乗る前、吉岡と握手をした時、正明はふと、吉岡とは長く友達になれそうな気がした。正明は抜けそうになっている歯を、親指と人差し指で掴(つか)み、思い切り引張った。 歯は簡単に抜けた。 歯茎から生暖かい血が流れて来た。正明は抜いた歯を吉岡に差し出した。 「おい吉岡、これは僕と君が友達になった証拠や、取っといてくれ」 歯の根元には小さな肉片がつき血がついている。 ところが吉岡は掌(てのひら)に正明の歯を載せると、 「春日、必ずなくさんと持っとるぞ、これまで喧嘩ばかりしてきたけどな、お前との喧嘩が一番凄(すご)かった、俺はな、生まれて初めて喧嘩の恐ろしさを知ったぞ」 それから辛酸を舐め尽くす生活が始まる。 濁流の巻 第一部 中 「 縄 張 」p6 8月1日の闇市閉鎖は、占領軍の命令と共に、日本の警察が、失われていた威信を回復すべき、絶好のチャンスだった。 だが大規模な闇市(やみいち)閉鎖により、打撃を受けたのは、一般の庶民だけではなく、浮浪児達もそうであった。 この闇市閉鎖により、約1万件の闇商店が撤去されたが、闇市は決してなくならなかった。小規模な形で大阪の各地に分散した。生きるために、人々は闇市を必要としたのである。 だが小規模になると、浮浪児達はかつてのように、闇商人の眼を盗んで、食物をかっ払うことが出来なくなった。 見付かる危険性が強く、最早、闇市で食物を盗むことは、不可能な状態になってきた。 浮浪児達が、自分たちの命を守るため、グループを作り、一般商店の品物を盗まざるを得なくなった一つの原因は、この闇市閉鎖にあるだろう。 つまり、時流の変化が、浮浪児たちを、自然に団結させたのである。 浮浪児狩りに警察が本腰を入れ始めたのも、(昭和・編集者記入)21年の夏以降である。 阿倍野の浮浪児たちは、浮浪児狩りのサイレンに怯(おび)えながらも、生きるために、日々の食料を何とかして獲得せねばならなかった。 浮浪児達は狩人ではない。 狩人は警察であり、浮浪児達は棲(す)み難くなった焼け野ヶ原の中で、狩人に追われながら、少なくなった食物を得るために、群れをなし、野良犬のように、飢えながら、商店の品物を盗み、残飯をあさらざるを得なかったのだ。 私は夜明けからこの中を読み出したが、 胸を突かれる場面が多く、時には数行読んでも、堪えるものがあり、 座っていられなく、部屋を歩き回った。 著者が体験者・北垣庄助氏から戦災孤児の実際を取材してまとめた大作なので、 細かなところまで行き届いている。 昭和20年からの日本の敗戦直後の歴史を学ぶことができる。 現在、日本人と日本の劣化をしみじみ味わいながら 平成が終わろうとする春を過ごしている。 戦争は国内では未だ起っていないようだが、 既に国内の子供たちは死の危険にさらされている。 人々はとっくに東日本大震災を忘れ、 放射能汚染のために病に苦しむ子供を気にかけていない。 今、この歴史の有様を筆に託す人は、日本の自滅をどう描くことだろう。 ***************************** #
by grpspica
| 2019-02-17 00:00
| 本の感想など
2019年 02月 15日
2月13日の衆議院予算委員会で、 憲法9条に自衛隊を明記する必要性について、 立憲民主党・本多平直衆院議員が質問したところ、 安倍首相が異様に興奮し声を 荒げて答弁する様子が 「異様」、「変」との声が上がっている。 何が「変」と言って、本多議員が安倍首相の発言を 「実話ですか?私の実感とは 違うのですが」 と聞いただけなのに、いきなり、 「本多議員は、わたしの言ったことはうそだと言っているんでしょ。 それは非常に 無礼な話ですよ。 うそだって言ってるんでしょ、あなたは」 「本当だったらどうするんですか、これ」 などと激昂し始めたことだ。 詳しくはこちらの↓サイトの映像を参照。 ![]() ![]() ![]() まあね、今に始まったことではない安倍首相の嘘つきぶりを知る人たちにとっては、 ああ、また嘘こいてるな、とバレバレの発言なのだが、問題はこの話が嘘か本当か ということよりも(もちろん、その真偽も重要だが)こうした情緒的な「お涙頂戴話」を改憲の根拠とすることこそ異様であり、おかしいことなのだと判断すべきでは ないだろうか。 いかにも、この国の民はこうした涙のエピソードに弱い。つまりそれを心得ている からこそ彼はこんな話を披歴するのだ。はいはい、またやらかしてるね、ってことさ。 普通事実だったら「本当だったらどうするんですか」なんて言わないけどね。 ![]() ちなみに、安倍首相のお涙「実話」には他にも「津波に飲まれた女性公務員の巻」 があり、すでに亡くなっているので本人の気持ちは不明なのに、勝手に成り代って 「命を賭して国を守る美談」に仕立て直している。 YOUTUBEに上がってたから、これも探してみようね。 *************************************** #
by grpspica
| 2019-02-15 16:56
| 命・平和・人権
2019年 02月 14日
え〜〜〜と、本日はヴァレンタイン・デイらしいので、 ちょっと風変わりな ラブ・ストーリーの映画をご紹介してみようかと。 これは『パンズ・ラビリンス』のギレルモ・デル・トロ監督の最新作で、 第74回ヴェネチア映画祭金獅子賞を始めとして、 第90回アカデミー賞で 4部門(監督・作品・作曲・美術賞)、 第75回ゴールデン・グローブ賞でも 監督賞と作曲賞を受賞している。 映画賞受賞の有無で作品の評価をする気はまったくないが、私としては ヴェネチアの金獅子賞は割と当てにできるので、鑑賞の際の参考にする ことも。 で、普通、これほどの受賞となれば、すなわち一般受けする、好みを選ばない名作と言うものだよね。 ところが本作は『サウンド・オブ・ミュージック』などとは 程遠い、どちらかと言えば非主流の、通好みのダーク・ファンタジーと呼ばれる作風なのだからビックリだ。 ついにデル・トロ作品が世界でもっとも有名な映画賞の、しかもあろうことか 作品賞や監督賞をとるようになったとは・・・・・・と、ちょっとした感慨を覚えた ことだった。 ・・・ 時代は米ソの冷戦下。アメリカとソ連が宇宙開発競争にもしのぎを削っている頃のこと。当然、双方にスパイも暗躍したことだろう。 アメリカ軍の秘密研究所に南米アマゾンで先住民たちから「神」と崇拝されている不思議な生き物(ダグ・ジョーンズ)が運び込まれてくる。 研究者のホフステトラー博士(マイケル・スタールバーグ)や軍人ストリックランド(マイケル・シャノン)たちが、この生き物をどうするか話し合っている。 ホフステトラーは宇宙飛行に使おうと言い、ストリックランドは生体解剖して機能の 解明をしたい、と言う。 そんな話を聞くともなしに聞いていた研究所の清掃員イライザ(サリー・ホーキンス)はその生き物に興味を持つ。 ↑イライザの友人ジャイルズ(左写真の左)とゼルダ(右写真の右) イライザは聴覚はあるが、話すことができない障がいを持っていた。 が、清掃員 仲間のゼルダ(オッタヴィア・スペンサー)が何かと気にしてくれて仕事も不自由はなかったし、映画館の上にある古いボロ・アパートに一人で暮らしているが、隣家にはゲイで売れない画家のジャイルズ(リチャード・ジェンキンス)という友人も いる。 ある日、電流の流れる鋼鉄の拷問棒で生き物を痛めつけていたストリックランドが逆襲されて左手の指を2本食い千切られる事件が起きる。 血だらけの凄惨な現場を掃除するように命じられたイライザとゼルダ。 イライザは 血溜まりの中からストリックランドの2本の指を発見する。 と同時に、水槽の中に 閉じ込められている生き物を見つめた。 「彼」は2本足で人間のような姿をしているが手足にはヒレがあり、身体は青い鱗のようなもので覆われた半漁人のようだった。 ↑ 暴力と嗜虐が背中合わせにくっついたようなクソ男 ストリックランドに痛めつけられて傷だらけの「彼」に同情したイライザは翌日から水槽のそばでランチをとることにした。 「彼」は水面から顔を出した時には瞼のある つぶらな目をしていた。 イライザがゆで卵を置くと、それを手で取り、 ダンス音楽のレコードを鳴らすとそれにも反応した。 さらにはイライザの手話を理解して意思の疎通もできるようだった。 「彼」と仲良くなれたイライザは喜んだ。 彼女はこのことを誰にも言うまいと思っていたが、 秘密の交流を目撃してしまった ホフステトラーは仰天する。 遂にストリックランドは上層部から「彼」を生体解剖する許可を取り付け、その準備 にとりかかった。 「彼」とイライザとの交流を目の当たりにしたホフステトラーは なんとかして 「彼」を殺させまいとするが・・・。 その日が迫る中、イライザはゼルダとジャイルズにも支援を頼み、 とんでもない 一大事を決行することになる。 ・・・ この映画のすごいところ(いろんな意味で)は、イライザが異種生物と文字通り恋愛することだ。同情や憐れみに留まらない、人間同士と同じ恋愛感情を持ち、「彼」もまたそれを受け入れる。そしてさらにすごいことには、それが見世物趣味や異常なこととしてではなく、本当に純粋な出来ごととして描かれていることだ。 もちろんこの作品の結末はファンタジー(非現実)だが、優れた作品が常にそうであるように、今の世界の現実や、人間と社会の問題を問うものでもある。 同時にこれはイライザとストリックランドの対比の物語でもある。 そのまま マイノリティーとマジョリティー、負け組と勝ち組の対比だ。 いったいどちらが まともだろうか。 ちなみに、この二人の性的シーンが一部で問題になっているが(そのせいかレートはR−15)、敢て言うと、これらはこの二人を理解するために必要な場面 だったろう。 障がい者は弱く、守ってあげなければいけない子どものような立場でとらえられがち だが、イライザが心も身体も成熟した大人の女性であることを語っているのが冒頭の 朝のバスルームのシーン。 結局は誰よりも強い意志と行動力を見せるのが彼女で あるように。 ストリックランドと彼の妻とのセックス場面もまた、この人間の本性の多くを語って いる。つまり彼はこの時代のマチズモを体現し、またそれ以上に支配欲と嗜虐性に 満ちた、ファシストであり、サディストである。 『パンズ・ラビリンス』同様の残虐な描写もあって、こーゆーのが苦手な私は困惑しつつも、最終的には切なさや愛おしさに心が浸されずにはいられない。 これがデル・トロ監督作品の真髄であり、個性であり、稀有で、そしてかなり素敵な 要素だ。よこしまな心で観てはいけない。これは世にも美しいラブ・ストーリーなのだった。 それにしても、とにかく珍しいからと特に目的もないのに先住民が大切にしている 存在を奪い取り、とりあえず強引に我が物としてから何に使うか考えるって? ずいぶん傲慢で強欲で、しかも無為なやり方ですこと! ■オフィシャル・サイト ―――― 『シェイプ・オブ・ウォーター』 The Shape of Water 2017年アメリカ映画 20世紀FOX配給 123分 スタッフ■監督・脚本・製作:ギレルモ・デル・トロ 脚本:ヴァネッサ・テイラー 音楽:アレクサンドル・デスプラ 撮影:ダン・ローストセン キャスト■サリー・ホーキンス、マイケル・シャノン、 リチャード・ジェンキンス、オッタヴィア・スペンサー、 ダグ・ジョーンズ、マイケル・スタールバーグ ********************************************* #
by grpspica
| 2019-02-14 18:27
| 命・平和・人権
2019年 02月 14日
![]() その部屋一杯に積み上げある様子をTVで何度も見た。 今でもまだそんな人いるのかな? 「ブランド品にうつつを抜かす人は、自分に自信がないのだ」と発言する人も現れたっけ。 (余談だが、そういうブランド商品を持てば、特権階級とみなされ、チップの額もそれなりの額が普通に期待されるとのこと。ブランド志向が流行りだした当初は、その期待を裏切る少額チップに日本人観光客は呆れられ、馬鹿にされていたと聞いた。) 人にはそれぞれの価値観があるから、非難ばかりはできないがここに使われているのは我々の税金。 「必要とするものとその価値に見合った金額」が一致して初めて、お金は有効に生きると思うのだ。 世界の武器事情について、私が知り得た情報では、日本もアメリカも、技術者を育てる教育をしなかったことで、性能のいい武器を作れない国になっているという。 その評判の悪いアメリカ製の武器は、他国では断られている事実があるのに、日本は価格交渉もせずに、言い値で買っているのだという。 嘘で固めたアベノミクスの実態。 景気回復どころか、どんどん悪くなる実態。 役に立たないボロ兵器を高値で買うなんて、なんと馬鹿げた話だろう。 こんな風に我々の税金を無駄に使わないで欲しい。 もっと国民のために有効に使って欲しい。 そうすれば救える命もたくさんあり、 国民の生活も少し、いや大きく改善できると思う。 ******************************* #
by grpspica
| 2019-02-14 13:29
| 命・平和・人権
2019年 02月 14日
小説の中に短歌を見つけることほど嬉しいことはない。 黒岩重吾の小説をすらすら読めるのも、 その文体が短歌に近いからだと思っている。 10代の後半、手探りで源氏物語を読むことができたのも、 短歌に魅せられたからだと思う。 「子供のための万葉集」に接した幼き日の思い出。 その懐かしい記憶は、この小説の主人公・額田王との出会いだったと喜びが甦る。 子供の頃は男の人だと思っていた。 黒岩重吾は額田王をモダンで自立した女性に描いている。 女性の自立が現代よりはるかに困難だった時代。 額田大君の葛藤を女性の魅力として肯定している。 下巻p200〜201 十市皇女は立ち止まると、可憐なすみれの花を摘んだ。芯の方から拡がった紫の色は花弁の途中で消えてはいるが、花弁の先まで、薄い紫が滲んでいるように見える。 十市皇女は花を鼻孔に当て、匂いを嗅いでいたが、好い香りです、と額田王に渡した。 額田王は軽く鼻に当てると、見慣れているはずの花を、初めての花のように眺めた。 「母上、どうなさったのです、虫でもいるのですか ?」 真剣な額田王の眼を見て、十市皇女が不思議そうに訊いた。額田王は首を振る。 「十市皇女、 なぜ、花の中心から拡がっている紫の色は、花弁の先まで行きわたらないのでしょう。先まで赤い花もあるのに ..... 」 「母上、美しいものは美しい、で良いでしょう。どうしてすぐ、なぜ ?とお考えですか、なぜ、が続くと、美しい花も色あせます」 「いいえ、そうではありません、紫色も美しいし、それを慕って色づいたような部分もいとしい、お互いの調和がなんともいえないのです、そう、すみれの花がすべてが紫だったら毒々しいし、先の淡い色だけなら物足りない、二つの色の調和の見事さに気付くと、美しいと同時に素晴らしい、と感動できるのです」 「それでわかりました、だから母上はあんなに素晴らしい歌が詠めるのですね」 十市皇女の眼に、額田王を母に持った喜びが宿る。すなおに喜んでいる十市皇女に、額田王は、もどかしさ覚えた。 大友皇子とそなたの婚姻に、私は抵抗できませんでした、私は、そなたの気持を訊くことができなかったのです、そなたは私に、なぜ?と質問したことがなかった.....と額田王は胸の中で呟く。額田王に湧いたもどかしさは、十市皇女のすなおさのせいかもしれない。今は鎌足の妻となっている鏡女王も、すなおな女人だった。あれだけ嫌っていた鎌足を受け入れ、今は、こういう運命のもとに生まれたのだ、と諦めている、という。何に対しても貪欲な額田王には諦めがなかった。 下巻 p 37 別離 女帝が吉野から戻って間もなく、鏡女王は鎌足の妻になった。 『万葉集』は、鎌足とか鏡女王が一夜を共にした後に鏡女王が詠んだ歌を載せている。 玉くしげ 覆(おお)ふを安み 開(あ)けて行かば 君が名はあれど わが名し惜しも 玉くしげとは櫛の箱の意である。鏡女王は、暗い櫛箱の中に隠れているような夜が明け、あなたが帰って行けば、あなたと私の名は噂になるでしょう。あなたは得意かもしれませんが、私は名前が穢されたようで惜しくてたまりません、と詠んでいるのである。 媾合(まぐわ)ったことに対し、女人の悔(くや)しさがこれほど率直に表われている歌も珍しい。 鏡女王の悲しさ、悔しさが読む者の胸を打つ。 それに対して鎌足は、次のような歌を返している。 玉くしげ みむろの山の さなかづら さ寝ずはつひに ありかつましじ 歌意は、櫛箱のなかには三輪山のさなかずらのようなあなたがいる、あなたを得たい吾(われ)は、共に寝なければ耐えられない、というものである。 また、寝なければ、どうしてあなたを得ることができようか、とも読める。 ようするに、鏡女王の気持など無視して、共に寝たればこそあなたを得たのだ、という鎌足の厚かましい勝利の歌である。 額田(ぬかた)王は二人の歌を読み、自分はどんなことがあっても、鏡女王のような惨めな気持ちは味わいたくない、と自分に誓った。 「茜に燃ゆ 小説額田王 下巻」、黒岩重吾のあとがきより 平成4年1月 額田王の出自や身分についてはさまざまな説がある。なかには王族ではなく、豪族出身で、宴席で歌などを詠んだ女人であるとしたり、巫女出身説なども根強い。 私は額田王が大海人皇子(おおしあまのおうじ)の子を産んだにせよ、王とつく以上やはり王族であり、息長(おきなが)系の鏡王と、大王・舒明(じょめい)が息長系の女人に産ませた皇女との間に生まれた女人であると推測した。 乳母の氏族が額田部連(ぬかたべのむらじ)であったので額田王と呼ばれ、十代の半ばに皇極(こうぎょく)女帝に仕えたのではないか、と考えている。 実際、額田王は、『万葉集』に載っている歌と、産んだ十市皇女(といちのひめみこ)が、近江朝の大友皇子の妃になったということで、華やかな万葉歌人として有名になったのでその資料は少ない。 まさに謎の女性である。 私は本小説で、一般的に知られているこの有名な歌人に私なりの想像力を駆使し、新しい額田王像を描いてみた。 そういう意味で、とくに参考文献といったものはない。 『日本書紀』と『万葉集』は 、岩波書店の『日本古典文学大系』を使用した。 黒岩重吾の古代小説には、古代人を通して一人として同じでない考え方・性格が微妙に綴られている。 このことは、彼の現代小説全てに共通していることでもある。 ***************************** #
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| 2019-02-14 00:00
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2019年 02月 13日
角川文庫 昭和52年9月30日初版発行 昭和53年5月30日3版発行 2019年1月13~14日で読了 267ページの引用から 上司の顔 「その不安はあるかもしれません、しかし、今の経済界は、喰うか喰われるかの戦いの場所です、友好的な提携など存在し得ない時代です、だから、私は寧(むし)ろ、大株主として、販売網の利用を辻川創業に要求すべきとだと思います、2000万株と言えば10億、辻川総業の資本金の1/6です、これだけの大株主の要求を、辻川総業が頭から断ることは出来ないでしょう、最近、M汽船が造船会社の株を100億も買いました、何故、そんな馬鹿げたと(原文まま)なしたのだろう、と不思議がられていましたが、その結果、造船会社は、M汽船の第三者割当による時価発行増資の株を、引き受けざるを得なくなった、これにより、M汽船は莫大な利潤を得たわけです、私は友好的提携などあり得ないということを、強く主張するものであります」 これまで貝谷は慎重な男だと思われて来た。その性格は寧ろ女性的で、社内に敵もなく、温厚な人間だった。その貝谷の発言だけに、重役陣も気を呑れたようである。 「大変なことだよ、意見としては勇ましいがね」 と添島がいった。 解説も入れると726ページの長編。 手に入れた文庫本は、まるで古着のオーバーコートのよう。 見かけもだが、紙面が赤焼けしていたり、 猫が数匹いたお店から届いたのかと思うほどの臭気。 おまけに手垢と埃の匂いまで感じる。 100人が読んで、その都度転売したかと思えるような傷みようである。 今まで手にした古本の中の王者は「廃墟の唇」。 重さ345gで380円。 この1979年9月30日の初版の「大いなる変身」は 重さ342gで490円だ。 「廃墟の👄」に比べて、6年の間に物価が上がったのだろう。 いつもの通り作者の名人芸と思える出だしである。 p.265までは主人公・貝谷のノイローゼ、うつ病落ち込み、反動の飛び上がり、 鬱屈状態打破の様子が、会社につきものの話とともに絶妙に繰り広げられる。 カフカの「変身」の主人公について、 「あれは引きこもり」という池澤夏樹の一声を聞くまで 何事が起こっているのかさっぱり分からなかったけど、 黒岩重吾は、登場人物に医者も加えて、 医学基礎知識など、読者に新しい知識と理解力を授けていく。 「👄」の方には、 目次がないけれど「変身」には各章に63の題がある。 全くよく付けたものである。 昨日の読書では「上司の顔」のところでわからない場所が出た。 次の日、早朝から神棚に祀っている黒岩先生にお参りしてお願いする。 先生ご愛用のモンブランのインクが文字を形作るように 私の目をその動きに準ずるように、作動させてくださいませ。 この祈りのおかげで、どこがどういう風にわからないか確認できた。 ********************************* #
by grpspica
| 2019-02-13 00:00
| 本の感想など
2019年 02月 12日
博識と軽妙な語り口が魅力のDeeply JapanのTAKUMIさん。 彼女は何の主義者でもありません。 話の出所がはっきりしていて、資料が充実しています。 今の日本で、世界史・世界情勢の分野で第一人者のお一人だと思います。 「ベネズエラ:カリブ海と英領と大金持ち集団の逆襲」 2019-02-11 19:12:11 | アジア情勢複雑怪奇 ******************** #
by grpspica
| 2019-02-12 12:33
| 命・平和・人権
2019年 02月 12日
![]() 初出・週刊朝日別冊 昭和24年9月15日・記録文学特集 講談社文庫「病葉の踊り」 昭和57年6月15日第1版発行 読了・2019年1月11日 ・「北満病棟記」 黒岩重吾の芸術の世界はしばしば、音楽・絵画に匹敵する迫力を持つ。 ムンクとアルバン・ベルクが重なり合う迫力。 作者自身の朗読が響いてくる。 生涯を通して幾度も極限と人間の限界を経験した作者の表現は、 文字をはるかに超えている。 満州での病院生活。 削ぎ落とされた人間の骸骨から巨大な交響曲が鳴り響く。 あくまでも冷静沈着な著者の ナレーションが天才以上。 引用 p30 私が浅利に関して生命の現象とでもいった或る恐ろしい厳粛な光景を見たのは、それから一週間ばかり経った或る夜、即ち昼間空間に舞い上った病菌や、埃が、湿った無声の叫びを挙げながらひびのある床に横たわり始めた十時頃であった。あらゆるものが深刻な衝撃を人間の心に与えるには往々直接的よりも寧ろ間接的、又ふとした 瞬間的な映像によっての方がより一層激しい場合がある、真実というものが構成されたり理論づけられたものより、何気ない自然界における一場面、ふとした人生の一場面においてより明確に深く観取されるということを、感受性の強い人達は肯定するだろう。何故ならその一場面の光景こそ、その生命の投影であり、鋭い人間の生命の瞳はその投影を辿って事物の生命にたやすく到達し得るからである。 哲学と詩とムンクの叫びを文字にできた人。 魂と大地を揺り動かす文学者。 以下は作品を語る黒岩重吾氏の言葉。 それまで純文学を目ざしていた関係で、習作のつもりで書いたもの。たまたま週刊朝日で記録文学の懸賞募集があったので応募したところ入選。丹羽文雄氏などが、賞めてくれました。北満で病気したときの病院が舞台ですが、内容はまったくのフィクションです。小説を書こう、作家になろうと本気で思うようになったのは、軍隊時代。 大きな組織のなかでもだえる人間たちをみているうちに、むらむらと書く意欲が湧いてきた。だが、本当に書いてみようと決心したのは帰国してからでした。 出典 別冊宝石115現代推理作家シリーズ2 黒岩重吾編 昭和38年1月15日発行 ~~~~~~~~~~~~~~ 表題にもなっている「病葉の踊り」について 作者の難病体験が、病魔の洞穴で咆哮する。 凄まじい現実感。 絵のように見えてくる文章で綴られる。 病気と健康は戦争と平和な状態くらいに差がある。 特に毎秒、拷問のような症状に苦しみに何年も耐え、 その結果人生を棒に振るような病は切ない。 黒岩重吾は病魔という残酷な人生に耐えた人間である。 病院での経験を詰所で書き溜めたシリーズに、私は彼の慟哭を聴く。 引用p192 だが足掻きにしろ、俺は今まで力一杯やって来た事を後悔はしない。それがあるから俺は死ねるのだし、俺はやはり猿ではなく、人間だったと思う。 いつもながら、結びの一言が決まる。 この作品についての若き日の作者のコメント。 完全に自分だけのために書いた小説。自分の胸にあるすべての感情を吐露するために読者が読むことを意識せず、書きまくった。二週間かかりました。 出典 別冊宝石115現代推理作家シリーズ2 黒岩重吾編 昭和38年1月15日発行 ********************** #
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| 2019-02-12 00:00
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2019年 02月 11日
タグ:本の感想など ←クリックで記事一覧へ 集英社文庫 1996年1月25日第1刷 2019年1月12日〜15日で読了 55からなるエッセイ集。 「間口が広く奥行きが深い」と形容される作家のエッセイは、どれも面白い。 「古代人の正月」から始まる。 自身の正月体験を交えながら古代人の食生活に思いを馳せる。 時をさかのぼったり、場所をマメに変えたり。 五感の鋭い黒岩流の統一した結論に導かれるまでの内容は 刺激的で神経がすっきりする。 ・「覚醒剤について」 ・「ノイローゼについて」 ・「うつ病との闘い」 ・「自由な喫煙」 これらのタイトルのエッセイでは他の事柄との合わせ方で、 現実的な重いテーマを、いつものように軽くしている。 黒岩重吾の世界は「説教がない」と評価されている。 読者は「いい夢を見ているうちに何かを習えている」のだ。 「とうがらしの夢」という題は、 自分の意見が辛口なのご存知のせいか、はてまた、 「エッセーにピリッと刺激され、奮起してほしい」 との願いを込められた故か。 彼の長編小説を読了する間の「気分替えと疲れ取り」に読むのに最適な本。 ************************* #
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| 2019-02-11 00:00
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2019年 02月 10日
「砂の山」 初出 ・別冊小説新潮昭和37年1月号 「消えた女」角川文庫 ・平成5年5月15日発行 読了・2019年1月16日 女優・山名信子の交通事故死をめぐって ・事故当時のトラック運転手 ・信子の夫・山中恭介 ・昔の劇団仲間でこの度共演する予定だった堂本 この3人が話をする形態になっている。 読んでいて芥川龍之介の「藪の中」を思い出した。 わずか27ページの作品の中に、息が詰まるような人間模様が凝縮されている。 黒岩重吾を読んでいると、時々、欧米の文豪に並ぶ世界を 訳を通さず味わえるようで嬉しい。 この作品には、亡くなった信子の独白がないのが寂しい。 「藪の中」では、死後の真砂の独白が印象的だった。 同じように「信子の独白を書いてください」とお願いしたら、 どんな独白を聞く事が出来ただろう。 p8 トラック運転手の話。 あの女が、自転車のハンドルを切っていたら、わしが東から走って来たんだから、少なくとも三叉路より、少しでも西のところではねている筈(はず)です。今まで云ったように、女は坂道を下りて来て、真直ぐ、トラックの前に飛び込んで来たんです、気が狂ったか、自殺でっさ。 ( 現場の調査では、運転手の証言は、正しいとが判断された) 夫、山名恭助の話。 私は信子が、自殺したとは考えられません。二日後に公演される劇の、信子が演ずる役の解釈について、俳優としての信子の考え方と、劇作家、演出家としての私の考え方と、時々食い違いがあり、時々練習も進まないほど議論しあったことはありました。 でも、そのために自信を失い、自殺するようなことは、絶対考えられません。 信子は、俳優だからです。信子も私も、信子のこの公演のために、幾年も頑張って来たのです。 p19~20 堂本の話 山名さんから、信子さんの相手役になってくれ、という申し込みを受けた時は、実際驚きましたよ。 何とも云えない、そう、自分自身が今やっている演劇の世界というか、いや違う、人間の執念が恐ろしさを、まざまざまと感じたなあ。 6年前、僕は雀座(すずめざ)で、信子さんと恋愛関係にあったんです、そうですか、山名さんはそんなことまで、云ってるのですか。 信子さんとの間に、肉体関係はありません。でも僕は真剣に信子さんを愛していたなあ。 あの美しく、華やかな雰囲気、雀座の男連中は、みんな信子さんを理想像のように思っていた。 僕は雀座では幹部だったし、当時は演劇の世界こそ、僕の人生にとって最高のものだ、と純な青春の情熱を燃やしていましたよ。今ですか、今はまた別な考えも持っているが、そんなことはどうでも良いでしょう。 *********************** #
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| 2019-02-10 00:00
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2019年 02月 09日
2019年1月16日読了 p7 引用 父が蜜柑山を売ったことを笹田が知ったのは全くの偶然である。 その夜、社を終えてから笹田は何時(いつ)ものように新宿に飲みに出た。馴染(なじみ)の店に気に入ったホステスがいて、笹田は1日置きぐらいに通っていた。ホステスは真沙子といって、まだ22、3である。真沙子の故郷は和歌山の御坊(ごぼう)で、笹田の故郷である有田と近い。 知人を通して父の噂を知った笹田は故郷を訪れる。 父の家に行く前に 父が結婚した相手のバーを訪れ 女性と午後のひとときを過ごす。 喧嘩別れ同然だった父親と再会。 東京に戻ってしばらくすると、ホステスがオレンジジュースを持って上京。 誰だって何が起こりそうか分かる。 和歌山の風光明媚を伝えながら洒落た会話で、 端正なリズム感のある話を進めていく。 作者・黒岩重吾の作ったオレンジジュースは、やはり美味しい。 本書は1990年12月 KK ベストセラー社より刊行されました。 p28-29 令子は笹田の身体から腕を離すと、笹田を睨んだ。眼は充血しているが情事の余裕が消えている。笹田は令子の身体から離れ仰向けにベッドに横たわった。金が目的で父をたぶらかした女、と思い込んでいたが、笹田の思い違いだったかもしれない。 その日、令子と別れたのは5時過ぎだった。 #
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| 2019-02-09 00:00
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2019年 02月 08日
「深海パーティ」 なんと粋な題。 深海には見たこともない珍しい魚が泳いでいる。 オムニバス形式の連作。海外作品のような 短編集。 ピカソのようなデッサン力。 シャガールの絵のような現実感。 揺らめくユトリロの非接触。 超現実のサイケな世界に連れて行かれる。 キャバレー勤めの人の話も出てくるので当然ホステスが多い。 故に重吾の出番がたくさんある。 いつどこでも何度読んでも飽きない 彼の表現力の一つを紹介しよう。 肌は笑った より112ページ引用。 美知の身体は海堂が想像していたよりも素晴らしかった。きゃしゃだが肉付が良い。 抱くと押し潰(つぶ)されそうで、意外なほど弾力のある身体が撥ねかえってくる。 身体中の窪みは深く、肉が微妙である。脇の下、背の窪み、膝の裏、そんな場所が、普通の女より窪んでいるのである。勿論、体を曲げたりした場合だが、それだけ肉が厚く弾力があるのだろう。脂肪太りではない。美知は何時か全裸になっていた。 美知は肉体の技巧にたけていた。 海堂に抱かれながら、爪で柔らかく、海堂の太腿(もも)の先や腹部の横を掻く。自分だけ喜ぶよりも、相手も喜ばしたい、日本の女には珍しい感情を持っている。 >日本の女には...... 日本の女で悪かったわね.. 人生に退屈した人に活力を与える素敵な作品。 ************************ #
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| 2019-02-08 10:25
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2019年 02月 07日
・「卑弥呼」 生まれて初めて卑弥呼に関する歴史エッセイを読んだ。 清澄明朗な文章は、疲れの来ない研究者の声となり、 つまらない、ゲップの出そうな退屈な話にならない。 中国の歴史も同時に知ることができ、興味深い倖せな時が流れる。 ・「倭迹迹日百襲姫(やまとととびももそひめ)」 黒岩氏は現代小説においても人間を視るように、 神話の世界でもその洞察力と直感・歴史の検証と推察の谷間を埋めるべく、 想像力を交えて、今までない香料のように、神話を読者に解説する。 今まで、神話のここそこを知っていたけれど、 つなぎ合わせることの出来なかった神話を説得力のある音楽で奏でるようだ。 今まで、まばらに知る神話をつなぐことの出来なかった私だが、 説得力のある黒岩氏の導きで、まばらな神話もうまく繋がり、 美しく奏でられた音楽を聞くように、心に入って来る。 ・「推古女帝」 私は推古女帝(豊御食炊屋姫・とよみけかしきやひめ)を「紅蓮(ぐれん)の女王」という題で小説にしたのは、今から十数年前です。 その小説は現在「中公文庫」に入っていますので、読まれた方もおありだと思いますが、再び取り上げることにしました。 いったん小説にしたものをなぜ ? と問われる方もおられるでしょう。 その質問に対しては、古代史というのは、研究すればするほど、視野が拡がり、新しい解釈が生じる場合が多い、と答えたいのです。 もちろん、核となる部分はあまり変りませんが、推古女帝の場合は、その出自や、女帝の異母兄弟の穴穂部王子(あなほべおうじ)に関して、当時とはちがった考えをもつようになりました。 と同時に小説ではほとんど書かなかった、聖徳太子との関係、またいつ大王に即位したか、などにも触れてみたい、と思います。 p221 ところが新興勢力である蘇我氏は、稲目が二人の娘を后として以来(220 ページの系図参照)、 次第に力を増し、女帝が皇后になってからは、何かにつけて、大王の権威を借り、物部氏を圧迫しはじめたのです。 馬子の妻は守谷の妹ですから、最初二人は仲が良かったのですが、権力争いとなると、婚姻関係など吹っ飛んでしまいます。 ことに敏達大王(びだつだいおう)の身体が衰えはじめた敏達13年頃から、馬子と守谷の争いは熾烈になったのです。 『日本書紀』は、この争いの原因を崇仏派の蘇我氏と廃仏派の物部氏というふうに、仏教の争いとしています。だが最近では、守屋も渋川寺を持っていたことが説かれ、仏教戦争というより、敏達が亡くなった後の大王位争いとする説も有力になってきています。 私も先年の藤ノ木古墳の開棺以来、両者の争いは大王位争いが主な原因ではないか、と考えるようになりました。 p227~8 ・解説 清原康正 こうした古代史研究を、黒岩重吾はあくまで作家としての立場から遂行してきたのである。もちろん、単なる推理、空想ではなく、資料を綿密に分析した上でのことであるのだが、前に紹介した「古代史というのは、研究すればするほど」云々の指摘には、それだけ実感がこもっている。その一例を、「日本経済新聞」(1993.12.5)に発表した「斑鳩の雨」という短いエッセイに見ることができる。 これは「小説中央公論」の新年号のグラビア撮影の為に播州の斑鳩の里を訪れた時の印象を記したものである。その中で1991年に大和の見瀬丸山古墳の内部の写真が公開されたことに触れ、「その結果、私の推古女帝観が根底から揺らぐような事実が判明した。当然、太子と推古女帝の関係に対する従来の考え方も訂正せねばならない」と述べている。この柔軟性は、歴史学者には見られないものである。 こうした新しい発見による成果をとり入れて、黒岩古代史小説はますますの充実ぶりを示している。その魅力の一端を本書からもつかみとっていただきたいものだ。 1994年2月10日発行 中公文庫 p257 -258 他の収録作品 ・磐之媛(いわのひめ)の嫉妬 ・創られた神功皇后(じんぐうこうごう) ・天照大神の誕生 ・忍坂大中姫(おしさかのおおなかつひめ) ・雄略大王と王妃の怨念 ******************************* #
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| 2019-02-07 08:35
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2019年 02月 06日
![]() 角川書店・昭和59年11月10日24版発行 読了・2018年12月14日 主要登場人物 北川順子 初めて自分に近い主人公に出会えた。 順子と私の育った環境はお金少なめ。 もう少しお金があれば。。 でも誤ったことは嫌い。 沖野妙子 順子のかつての同僚。順子との友情が爽やか。 男性 桂 修 自殺を図った沖野妙子を助ける。 遠山(建設会社主任技師) 北川純子の上司。 不正を働く。 黒岩重吾は、人類社会に確固たる理想を持っている。 しかし小説にはドロドロしたものを盛り込む。 豪華絢爛たる悪徳の通俗小説ながら、押し付けがましい説教もなく、 読者は自分の価値観を修正できる機会を得ることができる。 私にとっては常に母が方向づけてくれた世界。 そんな懐かしい微風を、感じた。 でも若い時には気づかなかった。 戦争・貧乏・絶望の難病を体験した作家から与えられる。 黒岩が常にテーマにする「お金や色事に狂う人間の世界」には無縁で育った。 クリスチャンホームにも稀には良いことがあるようだ。 仲良しの尾崎秀樹さんが解説を書いている。 「愛の装飾」は「週刊女性」の昭和38年1月16日号から9月25日まで連載されたが、BG(ビジネスガール)を主人公とした小説はこれが最初だという。 ー 中 略 ー さらに面白いことに、主人公と同姓同名の BG が愛読者の中に3人もおり、小説と同じく建築会社に勤める女性もいたそうだ。「週刊女性」では連載完結後に、その1人をはじめ4人の BG をあつめ、黒岩重吾を囲む特別座談会を開いているが、その中で彼は「愛の装飾」のモチーフにふれて語っていた。 (黒岩重吾の言葉) 「現代は愛の不在の時代であり、女性が愛情にたいして昔のような純粋さを失っている、だから現在の結婚への愛情は、おたがいの欲望のぶつかりあいで相手を愛すのではなく、自分を愛するところからはじまる場合が多い、こうした現代において、ほんとうの愛情はつかみにくくなっているが、しかし真実の愛情は装飾的なものをかなぐり捨てたところから生まれるはずであり、主人公順子に託してそのことを書きたかった」という言葉がそれだが、ここには彼の恋愛観が率直にしめされている。 解説・尾崎英樹 p450 & p452 ************************* #
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| 2019-02-06 00:00
| 本の感想など
2019年 02月 05日
戦災孤児の話と知るまでは、タイトルを見ても何も思わなかった。 私が中学生の頃、「戦争中の暮しの記録」をテーマに 「暮らしの手帖」が一般から原稿を募集した際、 私が最も涙したのは、満州から引き上げた女性の話だった。 「夜、寝る所がないというのが、どんなに辛いか」と。 家族が乞食のような姿で帰国し、ある駅から大通りに出た時、 「『まぁ!』と声を出した女性が駆け寄ると、売り物の柿を手渡してくれた」 と書かれた文章を読んだ時、過酷な状況に涙した事がある。 チャールズ・ディケンズが小説の中で、 「もし今晩、寝るところがなければ、この美しく輝く星が、 どんなに哀しくみえることか」 と書いているのを読んだ時、私の心に平和なはずの戦争すら起らない社会で、 多くの人々が陥れられる状況を思った。 現在、このシリーズは古本以外での入手は困難。 単行本で出版された上下巻は文庫本になると3分冊になっていてややこしい。 さらば星座 第1部 濁流の巻 単行本上下 文庫本3冊 さらば星座 第2部 波濤の巻 単行本上下 文庫本3冊 さらば星座 第3部 奔流の巻 単行本上下 文庫本3冊 さらば星座 第4部 彷徨の巻 単行・文庫本共に上下 さらば星座 第5部完結編 黎明の巻 このように整理した状態を知らずに手にした最初の本が (家人が見つけた順に注文し、最初に届いた)昭和26年から始まる「奔流の巻 上」。 読書中、私の好きなヘルダーリンの言葉 「でも君は生まれたのだ。清澄な日のために」 が心に繰り返し響いて来た。 私は何故、この「さらば星座」が学校推薦図書として、 認定されなかったのか不思議でならない。 著者の政治力で推薦されている事が多いのだろうか。 そうだとするなら、残念でならない。悔しいと思う。 「日本が第2次世界大戦の結果を受け入れていない」事について、 ロシアのラブロフ外相の発言は、Deeply Japanで詳しく説明されている。 *第2次大戦の結果を認められない唯一の国 日本の調子の狂ったシロフォンのような外交は「日本人の歪んだ心」そのままに、 これからもますます世界に鳴り響かせるつもりなのか? この「さらば星座」シリーズは1990年集英社から 780部の著者の署名入り「愛蔵限定版」(1万8000円)が出ている。 古本では2万5000円〜1万8000円。 (本日それを5000円で手に入れる事ができたのは無常の喜び) ********************** #
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| 2019-02-05 10:36
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2019年 02月 05日
田中希代子さん、87歳おめでとうございます。 ゴッホの色とりどりの緑を捧げます。 今なお田中希代子さんの演奏に励まされていることを深く感謝しつつ マサコ 君微笑めば ( When You're smiling ) 作詞・曲 / ラリー・シェイ( Larry Shay )、 マーク・フィッシャー( Mark Fisher )、 ジョー・グッドウィン ( Joe Goodwin ) アルバム"a musical romance"試聴 あなたが 微笑めば あなたが 微笑めば すべての世界も あなたに微笑む あなたが 笑えば あなたが 笑えば 太陽が 輝いてくる だけど あなたが泣いたとき あなたは 雨を運ぶ だから あなたのため息を停めれば 再び 幸せになる 微笑を 続けて あなたが 笑えば すべての世界も あなたに微笑む 意訳:アンクルポップ Billie Holiday - When You're Smiling Michael Bublé - When You're Smiling [Official Audio] ****************************** #
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| 2019-02-05 00:00
| 音楽・哲学・宗教
2019年 02月 04日
![]() 短編集。どの作品もかなりサスペンスを交えている。 自殺、裏切り、殺し、賭博、コールガール。 相変わらずの手筈は整えてあるのだが、読み応えがある。 中でも人間の心理状態が面白い「花汁の囁き」は、逸品である。 黒岩重吾の作品の解説は、充実している。 しっかりした解説で、重吾を心から愛している。 その多くはすでに、あの世に旅立った人達。 宗 肖之介氏の解説より一部紹介。 黒岩重吾氏の作品を読んで、いつも第一に感じることは、ああいい小説を読んだなあ……という充実感である。黒岩作品に初めて接してから二十数年間、推理小説か歴史小説かといったジャンル、あるいは長、短編の別などを問わず、これまでそんな印象が裏切られた記憶は一度としてない。 とにかく黒岩作品には、独特な人間観察の深さがある。したがって作品世界に登場する人物像は、実人生の重みを背負って生々しく、観念の形骸(けいがい)のような空疎(くうそ)とは無縁である。 さらに世相、風俗など、戦後それぞれの時代性が作品背景に巧みに織り込まれ、優れた画家がオリジナルな色調を持つように、独特の黒岩色に染め上げられていくあたりにも、鋭敏な時代感覚というだけではなく、つねに時代の色を映さざるをえない人間の生き方への省察が窺(うかが)われる。 その黒岩色は、どちらかといえば暗いモノトーンで、映像にたとえるとモノクロ映画とでもいうか、華やかな色彩はむしろ敬遠されているものの、無彩色の病的な黒さや蒼いイメージの底に刃(やいば)のような鋭い煌(きらめ)きが潜んでいて、全体の暗いトーンゆえに、それがかえって際立った訴える力を持つようである。 角川文庫昭和61年11月10日初版発行 p307~308より引用 この短編集の目次 ・舗道の草 はっとさせられる。 ・錆びた鎖 なんだか辛そう。 ・黒い巡礼 何とも言えない。 ・青い花と牙 青春がむき出した刃。 ・花汁の囁き お金と人間が微妙 ・幻想花 モノやお金に執着した20代30代思い出す。 ************************ #
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| 2019-02-04 10:00
| 本の感想など
2019年 02月 03日
タグ:日ノ本学園・戦争とわたし ←クリックして記事一覧をご覧ください。 ![]() 2019年も節分を迎えることになった。なんとまぁ、である。 さて2018年の末から2019年年始にかけて、挨拶状をいただいた方に概ね次のような文章と共に、冊子・「吉田博の描いた学徒ーー日ノ本高等女学校49回生」を送付した。
ここ神戸では、穏やかな天候に恵まれて2019年が始まりましたが、みなさまはどのようにお正月をお過ごしになったでしょうか? さてグループ・スピカが、昨年10月に発行した冊子をお届けします。
弁護士は定年のない職業なので、2000年にセミリタイヤ宣言後もどのような形で仕事から退くか、常に頭にありました。幸いなことに事務所の後継者を得ることができたので、いましばらくは仕事を選びながらも、弁護士として働くことができそうです。
********* この本についてたくさんのメールや手紙をいただいたが、数日前に小学校の同級生から手紙が届いた。とても嬉しかったので、彼にこのタグに投稿することの承諾を得た。これからその原稿を入力する作業にかかる。 ![]() 明石市立鳥羽小学校時代の修学旅行? #
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| 2019-02-03 21:08
| 命・平和・人権
2019年 02月 03日
黒岩重吾は「株は投資でなく博打」と教えてくれた。 彼の長・中・短編、エッセイを通して、どれだけ株の話題が登場することか。 黒岩小説ではどのジャンルを扱っても、全く違う角度や設定で描くので 株の話も「また株か.....」と飽きることがない。 この作品は生々しい証券会社の様子がモロに伝わってくる。 自殺者も出て、その緊迫感が我が身に降りかかる災難のよう。 ロックやジャズのようなリズム感と 的確に配置される長くても3行ごとにまとまりのある文章に 我を忘れて過ごす。 引用 p62~63より 田倉は市電から飛び下りると、追い掛けられるように、金山証券の前まで走った。 連日の睡眠不足で、通用門の前に立った時は、胸が割れそうに鳴った。一寸電柱にもたれ、鼓動を静めていたが、背広のポケットに手を入れると、骰子(サイコロ)を掴み、高く放り上げ、落ちてくるのを慣れた手付で握った。 三。田倉は眉をひそめた。三は数霊学(すうれいがく)からいうと、山あり谷あり、波乱万丈の卦だ。 中 略 ふと漠然とした不安を感じる度びに、骰子を放り上げ、その数で身の安らぎを占うようになってから、もう一年たつ。 田倉は立ち上がった、窓から樹のない北浜の街路を眺めた。 銀行かと思われる瀟洒(しょうしゃ)な証券会社から、長い庇の古風な構えの株屋迄、売った買ったのひと時に、生命をすりへらす北浜は、確かに現代の腐食(ふしょく)した沼地だ。 ![]() *************************
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| 2019-02-03 09:53
| 本の感想など
2019年 02月 02日
![]() 本の旅人2001年5月号2002年7月号まで連載。 平成15年1月30日初版発行 角川書店 2018年12月27日読了 第1章「奥深い」では. 黒岩重吾の母親の人生が紹介される。 ナポレオンは「子供の運命は母親が作る」と言った。 実の親でなくても、人間の中身はどんな人と触れ合ったかで決まる。 親切で心温かい人にどれだけ触れたかで、その時受け取った見えないものを 後の人生で人に配る事になると思う。 同じ家に暮らし、多くの時間と出来事を共有する家族ならその影響は大。 重吾の母方の祖父は晩年を貧民街の伝道に身を捧げたキリスト者であった。 母親(重吾の祖母)が亡くなった後、姉妹は日も当たらない貧民街に住み、 その後父(重吾の祖父)が亡くなる。 重吾の母は、14歳から結婚するまでの7年間、 親類の家で暮らしたり寄宿舎生活をしたが、 当時の写真を子供達に見せることがなかったという。 その女性が21歳で結婚し、初めての子供を身ごもった時、 どんな思いで暮らしただろう。 重吾は筆舌しがたい苦労をした母に「人間の深さ」を感じながら 育ったのではないだろうか。 小説で家族の場面を書く重吾の小説は いつも繊細で細やか。 おそらく母なる人が 家庭でいつも光を放っていたと思われる。 第2章「船幽霊」は打って変わった父親の家系 祖父、 黒岩秀吉は明治時代かなりの海廻問屋であった。 小学校時代に和歌山市の祖父の家に連れて行かれ、 「船幽霊」の話を聞かされている。 祖父と孫の交流が見事だ。 黒岩重吾のシャーマニズムへの見解の深さはここが原点なのではないか。。 第3章「ツキは落ちる」 人間のツキについて語る。 神というものではないが、この世には、人間以外の大いなる存在があって私を眺めているのではないか、という気がしないでもない。 勿論、コピー人間を作れる時代に何をいっているのか、という理の声も聞こえてくるが、別に大いなる存在に利益を懇願したりはしない。そんなことをすれば大いなる存在は消えてしまう。 ただ人間は、人間が及ばない存在に畏敬の念ぐらい覚えていいだろう。それは私の中でツキと渾然一体となり少しも矛盾しないのである。 p42 黒岩重吾の遺言ともいうべき書。 単行本なので活字が大きく読みやすい。 彼の小説のように、実生活もドラマチックで波乱万丈。 かつてある有名な作家の最後のエッセイを読んだことがあるが、 お話にならない位、違う。 *************************
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by grpspica
| 2019-02-02 08:55
| 本の感想など
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