アンリ・ゲオン著「モーツァルトとの散歩」は1932年の著作。
アンドレ・ジイドのモ−ツァルトのピアノソナタK333を聴いたゲオンは、
第3楽章の最初の小節、左手の3番目の音がF音(Ⅰの和音)でなくG音(ⅵの和音)で、
そのニュアンスをはっきりわかるようにジイドが弾いたことを褒めている。
左手のG音は、突き出した、違和感のある味覚を与え、
なんだFじゃないのかと改めて確認したくなるような香り。
もし形なら、大きめに切ったきゅうりがサラダで目立つのである。
ゲオンは、モ−ツァルトの歴史を調べた。
そしてピアノソナタK309の第2楽章に、モ−ツァルトがびっくりする程に
クラヴィコードを弾いた少女のイメージを盛り込んだ。
その少女とはモーツァルトがマンハイムでピアノを教えたクリスティアン・
カンナビッヒの娘・ローザだ。
そのハイライトは、40小節目から始まる45小節にほんの少しかかる部分だ。
しっとりした主題からの32連符が効き味の見事な変奏。
リズムのひっくり返しと、64連符の4つの音でアニメタッチ。
名手の刺繍のような楽譜。そこに愛する人の雰囲気を託したモーツァルト。
この箇所は、お茶席での簡素な動作のよう。
お薄と繊細なお菓子をいただいた時のような味覚が広がる。
P.S. 霊的おふざけ
グレン・グールドの伝記を書いたオストウォルドは、
グールドのK309のソナタを名演という。
私は賛成しません。
ピアノ・ソナタの中では、グールドが大好きだったK284のニ長調が、
演奏者と作品の最高の相性と思う。
でもK330ハ長調の最初の録音は、
その時限りの精霊おろしのような稀有の演奏で、必聴に値する。
さてきょうは、10月4日の命日。
朝早くから、胃が痛いファンを起こし、
「アンドレ・ジイドのピアノなんか前座々々」とわめき散らし、
近親憎悪でモーツァルトにイチャモンをつけ、
グールドは、またもやブログに登場したがる。
こんなに長くなると「ブログに載せてもらわれへんよ」となだめつつ、
寝巻き姿でエンピツでひた走り。
題は「アンリ・ゲオンの主題による、グールドのモーツァルト変奏曲」に
しましょうか?
特別な日だから、お供えは何がいい?
あの日、私はアメリカ滝からカナダを眺めていた。ナイアガラの空気が夕方、
紫色になったことが忘れられません。
画家のバ−バラ・クーニーが「ビムロスの空」として、
大気の色染めを絵本にしています。
神様の国に帰っているのなら、もう少し温和しくしていてね。
でないと「成仏していない」と言われてしまうわよ。
「生きていたときのように、喋りまくれるのなら成仏する気はありません」
と屁理屈こねているようだけど。
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