施 光恒「英語化は愚民化」を読んで byマサコ |

世の中には稀に頭が良いだけでなく心も美しく、更には精神が健全で地球全体への配慮が行き届く素晴らしい内容の本が出版される。
施 光恒(セ・テルヒサ)氏は、平成の金字塔というべき内容を世に提示した。
名は体を表すと言うが、施(ほどこす)光の垣根で区分けされるクールジャパンムーブメントへの反対意見。
横文字カタカナが横行する今、インチキ臭い政府のまやかしに対して、神様が天使を遣わしたような反証を完成させている。
第1章では、何が企てられようとしているか?の説明。
第2章では、欧米の歴史が学べる。特に興味深いのは欧州の「庶民の知的世界を広げた『翻訳』と『土着化』」
哲学に興味ある私は、著者が引用した哲学者、長谷川三千子氏の言葉
「本来、哲学する行為とは日常生活の身近な知と切り離せないのではないか」
この言葉を20代から感じていたので、嬉しかった。
第3章「翻訳」と「土着化」
1870年代に始まった「日本を近代化するのには、英語か日本語か?」で明治時代の貴重な歴史が学べる。
第4章の冒頭(p100〜)では舞台は一気に現代に移り、 EUが中心となる。
フランスのエマニュエル・トッド氏の激しい言葉「ヨーロッパの政治エリート同士の談合による寡占を表現したもの」で EUを形成するブリュッセル体制を説明する。
至れり尽くせりで、次々にわかりにく事柄を紐解く著者。英語信心が日本の未来を如何に貧弱にするか、母国語の大切さを問うていく。
p111-p113の「私は法務省が『ヘイトスピーチ』という英語(外来語)をそのまま用いる事は望ましくないと考える」では幾つか代案をあげて、たとえば「不当な民族差別発言」あるいは「憎しみを顕にする発言」、もしくは「攻撃的発言」と称した場合、解決の糸口が 見つかるのでは?と。
むやみに外来語を使う事で、政治や社会問題について人々が何の考えも持てなくなる事を危惧している。
第5章では、日本の政治・教育を中心に話が進むが、商売や外資が大きくかかわり、なんと、 TOEFLの受験料は約27600円(230ドル)にびっくりする。
第6章 英語化が破壊する日本の良さと強み。
この第6章は、読みながらいろいろなことが浮かんだ。
施氏は相変わらず、美しい水を流すように母国語を失う危険性をあらゆる角度から説明している。
第7章は、頂上的な意味を持つ。
英語支配の序列構造として色々なケースが紹介される。
未熟な読者は、優れた著者の本を容易に語れないのは常の事。
実に多種多様。ほぼ全部と言っていいくらい、琴線に触れた。
私は、いい時期にこの本が読めた事に感謝している。
日本人の一人一人が、英語地獄から解放され、英語学習を楽しみつつ、明るい未来を作って下さる事を祈ってやまない。