調性と知性 byマサコ |
たとえば室内の色をみよう。
淡いクリームと焦げ茶色の部屋では、心理に与える影響は著しく違うと思う。
調性は、音楽の色といっても良いくらいに曲に雰囲気を与えている。
調性の違いが全く感じられず、どの調を聞いても同じだという事は
殺風景な世界に住んでいるような感じがする。
調性に言及しているピアニストとして知っているのはグールドとリヒテル。
グールドは「リヒテルは偉大なコミニュケーター」と評している。
一番好きな調性を表明された男性クラシックファンは、
グールドとミケランジェリのファンである。
グールドファンは勿論、バッハファン。
「バッハは神の栄光を表わす時にト長調を用いた」と言われている。
従って彼のお好きな調性は「ト長調」。
私は田中希代子さんがヘ長調の曲を弾かれる時、独特の光彩を感じる。
ヘ長調の服をきた少女が、特別知的に思えるのである。
リヒテルは「ヘ長調は知性の調性」と感じている。
田中希代子さんは1955年のショパンコンクールで
ヘ長調のノクターンop15-1を弾かれた。
「田中を1位に」と強く推したミケランジェリ氏は、
かつてパルチザンとしてドイツ軍に拷問を受けた人だ。
ミケランジェリファンは「讃美歌でもヘ長調の曲は好きになる」とおっしゃる。
海の底の「真珠」を採集しにいったピアニストの姿は、
敗戦前、生命を失ってまで戦争に反対した人々の面影を
宿している気がしてならない。
写真 白いフジバカマ
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