瀬長亀次郎のドキュメントフィルムを観て by マサコ |
しかしこの作品からは、1秒の苦しさも受けることはなかった。
涙こそ流し続けた2時間余りの放映が、とても短く感じられた。
ナポレオンは「子供の運命は母親が作る」という言葉を残した。
亀次郎の母は、いつも沖縄の言葉で、「ムシロの綾のように、まっすぐ、正直に生きるんだよ」と語って亀次郎を育てた。
貧しい農家の床にしくムシロの目は確かにまっすぐである。
バックの音楽がどれだけ映像を助けていただろう。
重苦しい部分は、沖縄を侮蔑する米国と内地人の罪深さが沖縄の苦悩と相まって一体となるようであった。
そして光一筋のような美しい調べがときどき天から降りてくる。
それは量も角度もちょうどいい音の波。
沖縄の受難は計り知れない。
白黒の写真で見せる、肥沃な耕作地が一晩で潰される様子。
耕す農地を奪われた人々の哀しみ。
伊江島では弾圧に爆弾が使われたことを思い出した。
なのにカメジローは、竜宮からの使者として竜神の守護を送り続ける。
それは私たちが海風を受けるように。
亀次郎の声は、どんな音楽家が奏でる音より美しい。
フレーズごとに整理された美しい日本語がさらに大フレーズとしてまとまって続いていく。
刑務所からは家の屋根が見えた。
自宅の小さなお店では、貧しい人々のためにタバコの1本売りをしたうえに「つけ払い」まで受け入れていた。
長女の瞳さんは、集金係として払ってもらえないお金を取りに行くのが嫌だったとのこと、これは瞳さんの著作で知った。
カメさん、私の人生もノロいけど
上からいつも沖縄の光を送ってくださいね。