はなこさんへ |
ここのところ、同居人の不調で、色々失礼してしまい、すみませんでした。
「かぶりあん」全くわからない本の話も、いつか本の林の中で「あれ、あの時の本?」と出逢う日の為に一応全部目を通しています。
はなちゃんの文体は、「液体系」でヨーグルトやミルク、スープでつらつら読みやすい。ミルクもスキムだったり、バター部分があったりで、さり気なくおもしろい。
1920年以前生れの日本人の日本語と、戦後60年内に生まれた人々との日本語は違いますね。TVの影響は大きい。
私の好みもあるのでしょうが、1938年生れの2人の女流文章家を境に、美しい日本語で職人のように書ける人はいないようです。
音楽評論では吉田秀和さんは「くどい」と言われながらも、日本語のしつらえが上品だし、言葉による行儀のよさが感じられます。
現在80、90代の方が、私が憧れる仏詩の邦訳を高く評価なさらずに直訳に近い、訳し過ぎない仕事を好まれることがあっても、その方は古い訳者と同レベルの格調高い日本語を身につけておられます。
良い悪いではなく、その時代の空気を吸ったりその時代の風に吹かれると、どうしようもなく影響を受けてしまうのですね。
古い日本語といっても私自身は「綿入れ衣類がたっぷり湿気を吸ったような」日本映画そっくりのセンスの文は子供の時から拒絶したものです。
語学講座にも感じますが、向学心を促されるのが好きな人と、気楽にやりたい人と、この25年で日本人の知性は、変化したのでしょうね。
ナボコフの原書は、どれがいいのか私にはわかりません。
大久保訳は、ロリータ本来の神々しさを読者に遺憾なく伝えた名訳と思います。意訳部分は、ナボコフも喜ぶのではというアイディアが沢山。
ただモーテルの貼り紙の訳が1ケ所気になりました。
お話は尽きませんが、この辺で。
今年もよろしくお願い申し上げます。 原 真砂子
2006.01.02
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