トレッキングこぼればなし5 by ノリコ |
このこぼればなしの読者の知りたいことは何だろう。やはり食べ物のことだろうか。
日本を発つ前に、東京の友人が、名古屋の湯浅道男氏を紹介してくれた。
「僕は山のことは、よく知らないけど、なんでも登山界ではかなり有名らしいよ。ネパ-ルにもしょっちゅう行っておられるらしい」と友人は言った。はじめての方に電話をすることはためらわれたが、「今、自宅におられるから、かけてごらん」と話が進んでいく。
案ずるはなんとやら、氏の人柄によるのであろうけれど、88年(といわれたように思う)の日本・中国・ネパ-ルの合同エベレスト登山の準備のため、まもなくカトマンズに行かれることや、過去のエベレスト遠征(隊長を努められた)やチョゴリ遠征(裏方をされた)の話がはずみ、カトマンズのエ-ジェントの大河原夫人に紹介状を書いて下さるなどの親切なお申し出も受けた。
その湯浅氏の食べ物についてのアドバイスが、とにかく生水は、絶対に飲まないこと。あとアルコ-ルについても話して下さったが、こちらは私に関係がないので忘れてしまった。
私達は、食料は持って行かず、現地食ですべてをまかなう、というのが、O野氏のプランであった。欧米のトレッカ-のなかには、現地での飲食に神経を使っている人が多い。バッテイ(茶店)で売っているミルクテイ-を飲まずに、宿で沸騰させた水を飲むというぐあいである。ミルクテイ-は生水ではないのだけれど、コップの洗い方や調理の仕方にギワクを抱いているのだろう。
山での訓練のおかげでか、少々のことではびっくりしなかった私も、カトマンズで売っているハエがブンブンたかっているパンの類には、さすがに手が出せなかった。
以前このトレッキングの第一報を載せた時にも書いたことであるが、ことエベレスト方面は、宿も茶店も完備されていて、お金さえ出せば、そこそこのものが食べられる。たとえば私の大好きなじゃがいも、チャパテイ、ヌ-ドル、そば粉を使った料理、卵、ヤクの肉など。やはり青い野菜は、不足しがちだ。ただ私は、辛い味付けが苦手だから、いつも香辛料をぬいてもらうように、特別に注文しなければならなかった。
1ケ月のネパ-ル生活で私を一番悩ませたものは、ダニである。多分寝ているときに噛まれるのだろう、この犯人の姿は見たことがない。まず足首のあたりがやられ、日がたつにつれ、ふくらはぎからだんだん上に上がってくる。手の方も服の外に出ている部分から腕の方に上がっていく。とうとうお腹までやられて、私もまいった。
今、日本は、桜の散る4月の半ば、私がダニくんにやられて、半年たつが、その痕跡はまだまだ消えそうもない。また近いうちにネパ-ルに行きたいなと思う。しかしそれまでにこのダニの撃退法を、誰か教えて。
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