エシカの笑顔 by Keiko |
エシカより1年下のわが娘がある日,残してきたお弁当を見せて言いました。
「エシカがやって来て 『ちょうだい』って言って急に私のお弁当に手を突っ込んで食べたんだ。一口食べて『もういい』と食べさしをまた突っ込んだから後はもう食べられなくなった。」
またか・・・と少し暗い気分になってグチャグチャになったお弁当箱をながめました。
全校で60人ほどの小さい学校なので学年が違っても子供たちの行き来は盛んです。そこには何組かのきょうだいも混じっていて普段は和気あいあいとしたムードですが,時としてこんなことも起こります。
翌朝,私はいつものように子供を学校に送っていく途中,なにかいい対策はないものかと考えていました。あまりひどかったら先生に報告した方がいいかもしれないし。
ところがわたしが呼んだわけでもないのに,なぜかその日学校に着いたら目の前にエシカが立っているのです。ニコニコはにかんだようなかわいい笑顔でこちらを見ています。何かいいことがあったのでしょうか。おはよう,と言うととびっきり上等の笑顔を見せてくれました。
「エシカ,きのうのこの子のお弁当,おいしそうだったかい」
少し恥ずかしそうな顔で うなずく。
「なにか食べてみたいものがあったら私にリクエストしてね。エシカ用のランチボックスを作ってあげるから」
大きく目をみひらいてじーっと私の顔を見てニッコリ。
うちの食べ物はほとんどが日本食です。たまに日本からのお客様がみえると,「日本の家庭より日本食を食べている」 と 驚かれます。これは私たちの方針でそうしているだけのことです。当然子供の持っていくお弁当もおにぎり玉子焼き風の日本式です。もちろん補助的にサンドイッチも作りますが。そんな訳もあってうちの子のお弁当は興味の対象になりやすいようです。
折からの健康ブームで日本食がもてはやされているのは世界中どこでも同じようです。特に乳製品や小麦アレルギーを持っている人には日本食が大変喜ばれます。
ここ10年でネルソン地区だけでもスシ屋が3軒も出来て賑わっています。私のところにワカメやヒジキを持ってきて使い方を教えて,と言う人もちょいちょいいます。もともと料理の好きな私は大喜びで講師役を買って出ます。
これには少し裏話があります。主人は在日韓国人でした。子供の頃キムチやごま油のにおいをさせないように気を遣った,という話を聞きました。大好きなお母さんが作ってくれる大好物をなぜか隠さなくてはならない。そんな空気が周りに満ちていたのでしょう。
それを思うとなんとこの子達の運のいいこと!!
なんておおらかな人たち!!
私たちの食文化を受け入れてくれる人たちに私は出来るだけのことがしたいです。(少しは話がそれましたが)
もともとエシカに悪意がないのは確かです。ちょっとやってみただけ,なのでしょう。でもそれがエスカレートすることもあります。子供の頃友達が持っている珍しい食べ物が欲しかった経験が誰にだってあるでしょう。実際食べてみたらいつのも見慣れたお母さんの料理の方がうんとおいしかったりして。
あれから私はエシカからのリクエストを楽しみに待っています。
娘のお弁当も無事です。周りの大人が少し気をくばってやること,少し手をかけてやることで子供は満たされるにように感じました。
それどころか,あの日少しばかりエシカに小言を言ってやろうかと思って出かけたのに,反対に彼女の笑顔が私の心をすっかり和らげてくれました。あの笑顔を曇らせることなく自分の気持ちを伝えられたのも,他ならぬ彼女の笑顔のおかげです。ありがとう。こうして私は今日も子供たちに教えられながら暮らしています。
起こったことだけを見つめてしまうと、大人も子供も逆回転してしまう。
keikoさんのお人柄がよく出ているお話、子供を見る我が目を考え直しました。
いいお話をありがとう。モニカ
僕には子供は(今のところ)いませんが,甥と姪はとてもかわいいです。←叔父バカです。
「ちょっと気になった。」だけなのですが,抑えが効かないのですよね。
ちょっとだけ大きくなった近頃では,僕も立場的に叱らなければならないこともしばしばですが,なるべく「雷が落ちる」ようなことではなく,静かに話してわかってもらう。わかるまでじっくり話すということを肝に銘じております。
本当にわかったときの「ごめんね。」や「ありがとう。」の一言と笑顔が見たくて見たくて。(←ホントに叔父バカ。笑)
子供の話を読むと、子供時代の思い出が蘇ります。
お弁当では、小学1年生の時、早く食べて通人のを見て歩きました。
ある子のお弁当に小さな卵が入っていたので「小さな卵だね」と言うと、その子はワァーンと泣き出したのです。
「私が小さいと言ったから泣いたの?」と聞くとこっくりしました。
帰宅して母に「小さい卵」のことを聞くと「それはウズラの卵」と教えてくれました。
「私にも入れて」と言うと「小さくて剥きにくく、忙しいからダメ」と断られました。
「お泊まり」はとてもいいです。他人の母親ぶりに、自分の親には感じないことを一時に習えます。
友人の母親に髪を洗ってもらったことは今でも甘美な思い出です。
親にしても,よその子の様子を見て「あ~ この歳の子はこんなもんか」と安心できたり。友達の手前いいところを見せようとしているわが子に吹き出しそうになったり。
時たま,二人そろって泊まりに行くことがあります。の~んびりして,夫とふたり。平日なのにワインを開けたくなってしまいます。
ほんの一晩ゆっくりするだけなのに,なぜか子供に向き合うパワーがまた沸いてきます。
エネルギーがキラキラ輝いていて、その愛情の分け前が欲しくて...。
そこでKEIKOさんの所に「あなたがあの美しいお弁当を作った人?」
と嬉しくてはち切れそうになって、挨拶に来たのでしょう。
子供が愛しいのは、大人よりも「愛」や「誠」に敏感だから。
「人が幾らお金を持っているか?」「俺が上、アイツは下」といった大人達の
くだらない思い方をまだ知らないから。
小さなことですぐに喜び幸せになってくれる子供を守るのは、とても楽しいです。
お料理は立派な言語で、気持ちを表現するのに素晴らしい手段ですね。
食べ物があり、分け合うことを知れば、人類も家族もバラバラになることはない。
子供同士おんなじお弁当を広げるうれしさ。
新しい味に触れる機会。
エシカと私がもっと仲良しになれる。
エシカが将来,日本文化に興味を持つきっかけになるかもしれない。 などなど考えたら夢がひろがります。